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前回のあらすじ(残念ながらそんなものはありませんが、言葉の雰囲気だけ)

オリジンから突然の召集をかけられたロイドたち。無数に広がる過去と未来の枝葉の一つが、魔族に冒されようとされているらしい。ロイドたちはオリジンの頼みに答え、過去へと飛ぶ。それはロイドたちの世界ではない、けれども確かに存在している四千年前の古代大戦真っ只中の世界だった。ロイドたちは図らずも古代英雄・ミトスたちの軌跡を知ることとなる。まだ英雄と呼ばれる前に、ミトスたちの――――。


オリジンの力及ばず、数組に離れ離れになってしまったロイドたち。ゼロスはジーニアス・しいなと共に、シルヴァラントの首都に飛ばされた。ゼロスたちの世界では衰退世界と名付けられているが、四千年前の過去にその面影はなく、高度な魔科学文明が栄えていた。四千年前の知識など、誰一人持っていない。情報収集にと手当たり次第に聞き込みをしていた三人は、なんと憲兵にしょっ引かれてしまったのだった。

「今が戦時中ってすっかり忘れてたわ。そりゃあ、見慣れねぇヤツらがうろうろしてりゃあ、不審だろうなあ」

「あんたはこの非常時に、なにのん気なこと言ってんだい!」

「つっても、どうしようもねぇだろ。抵抗したら、余計こじれるだろうし」

「なんていうか、こういうシチュエーション慣れてきちゃったのかな。緊張感ないよね、ぼくも含めて」


***


このシリーズはクラトスだけ、女体化しています!

(古代英雄全員性別逆転も考えたけど、流石に捌ききれないな、と思って)
(時間軸的に、ED後だけどクラトスさんはまだデリスに行ってないってことで。クラ×クラには食指が動かなかったので、クラトスさんはダイクさん家で療養中です。)




 テセアラのスパイ嫌疑を掛けられた三人は、あれよあれよと王城へと連行され、あっと言う間に謁見の間へと通された。途中、ハーフエルフと判別する機械に通され、最初から隠すつもりはなかったが、ジーニアスがハーフエルフだとあっさりばれてしまった。出会った頃に比べてジーニアスも随分と図太くなったようで、ぼくはハーフエルフだけど何?だって誰も聞かなかったじゃん、とロイド張りの開き直りを見せていた。ゼロスたちの世界のテセアラのように、ハーフエルフだからと無闇に殺されるわけではないようだが、結局種族で縛られることに変わりはない。どうにもいい気分じゃねぇなあ、とゼロスは後ろ手に拘束されながら思った。しいなも同様だ。彼女の場合、隙を見て縄抜けぐらいは容易いだろうが、王への謁見の意図が読めない今、下手に動かない方が賢明だ。ジーニアスも従順だ。この辺りの機微に長けているゼロスが大人しく従っているのを見て、それに倣ったのだろう。立ち回りに自信があることは確かだ。とんでもなく頭の切れる者でもない限り、口八丁で丸め込むことも可能だろう。

 放り出されるようにして謁見の間に転がされた三人は、それぞれに文句を言いながら、玉座に座っている男を見上げた。随分と若い。ゼロスとそう年齢の差がないように見えた。その男が、ゆっくりと降りてくる。その目は好奇心に満ちており、ゼロスたちを面白そうに見下ろしていた。

「あの王様、右と左で目の色が違うね」

 人間よりも視力の優れているジーニアスがそうしいなに囁く。彼女も訓練を受けているので、並の人間よりも利く目で、じっと王を見つめる。青と赤。ウンディーネとイフリート。そうしいなが思ったのは、何も彼女が精霊と契約しているからだけではない。清廉を連想させる澄んだ水色と、灼熱の業火をそのまま写し取ったかのような紅蓮。髪は新緑の色をしている。シルフのマナの色だ。まるで精霊をその身に宿しているかのようだった。ルナ・アスカの色はなかったが、まるで象徴するかのように、王冠には光の加減で銀にも金にも輝く大きな宝石が収まっていた。知らぬ者でも直感で覚るだろう。ああこれが、シルヴァラントの王か、と。力強いマナの色は、ただそれだけで人に威圧感をもたらした。思わず、三人が口を閉ざす。自然、辺りに緊張が生まれた。のだが、

「俺のオッドアイが珍しいなんざ、お前ら本当にテセアラの密偵か?んなこと、庶民街のガキでも知ってるぞ。よっぽどの阿呆か、じゃなきゃとんでもねぇ田舎もんだな」

 ジーニアスが脱力する。僅かに遅れてしいなが深いため息を吐いた。

「なんか、ゼロスと初めて会った時のことを思い出したかも」

「えー、俺さま、あんなに緊張感ない?もっときりっとしてたでしょ」

「よかったじゃないか。王様と同類だってさ、アンタは」

 王を眼前にしながらの、この遠慮のない私語だ。ゼロスたちを引き連れてきた憲兵たちは険しい顔をしてゼロスたちをたしなめようとしたが、それよりも先に笑い声が響いた。王のものだ。

「お前ら面白いなあ!度胸あるし、何より顔の造形がいい!気に入ったぞ」

「ほら、ますますゼロスそっくりに思えてきた。ぼくたち、一応スパイ容疑でここに連れられてきたんだよね?そこに造形がどうのっていらなくない?」

「まあそう言うな、ハーフエルフの坊主。俺は綺麗なものが好きなんだ」

 そう言って、一応拘束されているとは言え、身分も分からない三人に近寄って、一人一人をまじまじと見つめる。相手が美女ならば喜んで応えてやっただろうゼロスは、あからさまに不愉快そうに顔を顰めて、ふいと顔を背けた。残念ながら、男は守備範囲外だ。しいなはしいなで、あまり顔を褒められることがなかったせいで、僅かに顔を赤くしている。まあ、男だったら、しいなの顔よりもまず胸を褒めるだろうしなあ、と若干面白くなさそうにゼロスはしいなの反応を眺めた。ジーニアスはあまりよく分かっていないのか、負けじとじっと王の顔を眺めていた。観察に近いだろう。

「うん、いいな。赤毛の兄ちゃんも、黒髪のボインちゃんも、大層俺の好みだ。ハーフエルフの坊主は、三年後が楽しみだな」

 うわ、と隠すことなく嫌そうな顔をしたゼロスに、さも楽しげにうんうんと頷いた王は、それで、といきなり本題を持ち出した。

「お前らの目的はなんだ?俺の命か?それとも新型の魔科学兵器の情報か?」

「どっちでもねぇよ。人を探してんだ。そのために情報集めてただけだってのに、勝手に人をスパイだのなんだのと言いやがって」

「そりゃあ失敬。こっちにも事情があってな、バタバタしてたんだ。そこに怪しい奴が街中をうろついてるって聞けば、王として放ってはおけないだろ?」

 お前たちにも非はあるぞ、と言外に言われ、ゼロスも咄嗟に言葉に詰まった。戦争を体験したことのないゼロスたちにとって、戦時下がどれほど外からの侵入者に敏感になるのか、分かっていなかったのだ。

「で?俺らの処分は?死刑?それとも市中引き回し?」

「それが望みならそうしてやるが。お前らがスパイじゃねぇってことは分かったからな。さっさと人探しに戻んな。国境付近には近寄んねぇ方がいいぞ。あそこはここよりピリピリしてるからな。お前らみたいな怪しいやつらは、即行殺されるぞ」

「この者たちを放逐なさるのですか!」

 ようやく側近の一人が口を開いた。王は鬱陶しそうに手を振っている。どうやらいつものことらしい。ほどいてやれ、と命令が下り、ようやく括られていた手首は開放された。

「言葉に嘘はねぇよ。俺のことすらまともに知らねぇ奴が密偵のわけねぇし。たかが三人だ、放っておいても何も出来やしねぇよ」

「ですが、先日の魔科学兵器破壊は、三人のハーフエルフと一人の人間の仕業だと」

「ありゃあ例外だ。うちの飛び切り優秀なハーフエルフと、喉から手が出る程欲しい女の仕業だからな。まあ敵国の騎士ってところが厄介だが」

 ハーフエルフと人間。
 その組み合わせに、三人は思わず顔を見合わせた。彼らかもしれない、と。敵国ということは、テセアラだろう。クラトスがテセアラの騎士であったことは聞いていたが、女、というのはいささか不可解だ。ミトスたちの中で女性はマーテル一人だ。彼女が騎士であったとは聞いたことがない。クラトスやユアンからミトスたちとの旅のことを聞く機会が極端に少ないせいで、ただ単に知らないだけなのかもしれないが、正直イメージにない、というのが本音だ。マーテルとはコレットに乗り移った時や、精霊となって少しの時間、姿を見た程度だが、騎士と言われてもピンとこない。

「ねぇ、そのハーフエルフと人間って?」

「なんだ、仲間なのか?」

「ち、ちがうよ!ただ、ゼロスたち以外にぼくみたいなハーフエルフと一緒に旅してる人間がいるなんて、珍しいなって思って」

 ジーニアスの苦し紛れの言い訳でも納得したようで、それ以上の追求はなかった。ここシルヴァラントではハーフエルフも要職についているようだが、やはり差別は根強いようだ。彼らにしてみたら、ハーフエルフ風情と共に旅が出来るなど正気の沙汰ではない、と言ったところか。反吐が出る話だな、とゼロスは内心唾を吐いたが、ジーニアスたちに出会う前は自分はそちら側の人間だったこともあり、彼らの考え方が理解出来ないわけではなかった。もう共感は出来ないが。

「ハーフエルフの一人は、シルヴァラント籍の研究員及び戦闘員で、ユアンという男だ。ハーフエルフらしい整った顔で、俺のお気に入りだ」

 お気に入り、と言われて嫌な想像が脳裏を過ぎった。中でもゼロスが顔を顰めていたところがツボに入ったようで、王はゼロスを指さして笑っていた。ジーニアスは後半の呟きをスルーしたようで、しいなに、「ユアンってこう思うと結構ハイスペックだよね」と失礼なことを囁いていた。彼らにとってのユアンは、どこか残念な、が枕詞に入ってしまう男なのだ。

「ユアンもなあ、俺が顔を褒める度にそういう顔してたぞ。残念ながら、ユアンとはそれだけの関係だ。俺もあいつだったら寝間に呼んでよかったんだがなあ」

「げ、下品なこと言うんじゃないよ!」

 ゼロスに毎回ツッコミを入れているせいだろうか。この国最高の権力者にも構わずしいなは声を上げた。当然王の護衛である憲兵や、彼の側近はいきり立ったが、王はあっけらかんと笑って、

「あんた、いいなあ。その度胸がいい」

 と、しいなの手を取って、普通の女の子ならうっとりするような流れるような所作で、しいなの手の甲に唇を落とした。ジーニアスは思わず目を見開き、ゼロスは反対に目を細めた。当のしいなはと言えば、悲鳴も出ないのか顔を真っ赤にしていたが、ゼロスとのどつき漫才の成果だろうか、

「な、なにするんだい!」

 と、相手の立場も関係なく、引っ叩いた。もちろん、頬めがけて。ちゃんと平手でよかったなー、これで拳だったら奥歯の一本二本いってるだろうからなあ、とゼロスはずれたことを思った。ざまあみろ、という思いがないわけでもなかったが。高らかに響く頬を打つ音。一瞬の静寂。そして喧騒。ゼロスたちを取り囲む兵たちに殺気が走る。ゼロスたちも反撃出来るようにと身構える。が、それの緊張を破ったのは、またしても王の声だった。

「こりゃ失礼。そちらのお姉さんは、見た目に寄らず随分と初心なんだな」

「しいなが立派に成長したのは胸だけでね。情緒面は、ちょいとお子様なんだよ」

「苦労しているみたいだな」

「ま、そこはご想像にお任せしますってことで」

 それで?とゼロスが話の軌道を戻す。

「あとのハーフエルフ二人と、人間ってのは?」

 やはり叩かれた顔が痛いのか、そこに手を置いてさすりながらも、不機嫌になった様子もなく、悪巧みをしているような、意地の悪いそうなにやりとした表情で三人を見回した。この歳で王を名乗っているだけある。腹の据わりがとんでもなくいいのだ。

「こりゃまた見目麗しいハーフエルフの姉弟だよ。姉のマーテルは純情可憐な乙女って感じで、弟のミトスは性別不詳気味の美少年ってところか。俺も映像で見ただけなんだが、いやーあれは目の保養だな。出来れば写真にして私室に飾っておきたいところだ」

 どこまでが本音なのか分からないが、やはりゼロスたちの知るミトスたちのことのようだ。それならば、もう一人の人間とはクラトスなのか。いや、クラトスはどこをどう見ても男だ。見間違えようもない。ジーニアスが子どもの特権とばかりに、無知な振りをして、じゃああとの一人は?と訊ねる。この子どもが、この国でも選りすぐりのハーフエルフ集団に引けを取らない頭脳の持ち主だと知っていたら、こうもあっさりと情報を与えてくれなかっただろう。

 ジーニアスの質問に、途端、周囲の顔が曇った。あまりその女性は良い印象を持たれていないようだ。敵国の騎士ならば、戦場で相対することもあったのだろう。よっぽどひどい目に合わされたのだろうか。

「テセアラでも一、二を争う騎士でありながら、つい先日テセアラを出奔した女だ。その強さは鬼神の如く、彼女のせいでシルヴァラントは多くの兵を失った。テセアラは戦乙女だと囃し立てているが、俺たちにとっちゃあ死神だな。何度かこちらに寝返るよう密かにスパイを放ってはいるが、一度として良い返事をもらったことはない。呆れる程の忠誠心だ。彼女自身は貴族の生まれでありながら、戦場に身を置く、変わり者の長身の美女だ」

 俺も映像でしか見たことはないんだが、ついつい魅入っちまうぐらいの、とびきりの美女。
 と、王はだらしなく笑う。所々符号している点はある。だが、女性という前提がまず当てはまらない。

「彼女の名は、――クラトス・アウリオンだ」

 クラトス、クラトス?と、三人が脳内で復唱する。ぽかんと呆けたのも一瞬、えええー!!と三重に声が響いた。その反応が予想外だったのか、王だけではなく、この場に言わせている全員が驚いている。

「クラトスって、男じゃないのかい?!」

「そういう話は聞かねぇな。それに、間違えようのない外見だ」

 おい、手配用に写真作らせてたよな、あれどうした?と大臣に耳打ちすると、既に用意されていたのか、すっと差し出された。渡された写真に、三人は身を乗り出して覗き込む。写真には物珍しそうに大砲のような魔科学兵器を眺めているミトスとマーテル。それを操作する基盤部分を見下ろしているユアンとクラトスの姿があった。全身が映り込んでいる。ユアンとクラトスの身長差は僅かであった記憶のあるゼロスだが、写真の中の彼らは随分と差がついている。その差は、ゼロスのよく知るクラトスとロイド程だろうか。ゼロスですら少し見上げなければならない位置に顔のあるクラトスが、まあ随分と小さい。おそらく、ゼロスより数センチ小さいだけなのだが、対象が今まで見上げていた相手なだけに、その差は大きい。そして何より、しいなから何度もエロ神子と言われるゼロスが、その特徴を見逃すはずはなかった。

「そっちのお嬢さんほどじゃないが、立派な実りだろう?」

 そう言って下品に笑う王の視線は、たわわに実ったクラトスの胸に注がれているのだった。





***
こっちもなっげぇ。途中、楽しくなってしまって、どんどん盛っちゃいました。
クラトスは貧乳でもよかったんですが、色々と事情がありまして、そこそこの巨乳ちゃんになってもらいました。しいなよりはないけれど、リフィル先生ぐらいはあると思います。マーテルさんと同じぐらいか、ちょいマーテルさんの方が大きいぐらい。身長はゼロス君未満ロイド君以上です。そういうのはちゃんと本文で書きなさいって話ですよね。うまく絡められなかったんです。

シルヴァラントの王様は、暫定の設定です。名前すら決まってない(…)
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