× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 お題は、as far as I know さんからお借りしました。 ゲーム本編の時間軸の話です。 オリジン封印解放後を無理矢理に広げてみました。 仲良すぎるユアクラに、もやっとしたものを感じちゃうロイゼロで。 短縮にしてるのは、あえて言うなら、っていうぐらいで、別にCP色はありません。 ロイドにフランヴェルジュを託すと、クラトスはまるで糸が切れたように気を失った。オリジンを封印から解放した時点で、既に限界はきていたのだろう。それでも、何食わぬ顔でエルフたちの救出を手伝い、エターナルリングが出来上がるまでの時間を仲間たちと共に見守っていたその気力には、感心するやら呆れるやらだ。プレセアとリーガルに手伝ってもらいながら、ロイドは己の部屋へとクラトスを運んだ。クラトスは目を覚ます気配すらなく、まるで死んだように眠っている。口許に手をかざさなければ、彼が息をしているかすら分からない程、彼の生きている音は小さい。元々がそうだったのか、極端なマナ不足がそうさせているのか分からないが、ロイドを不安にさせることだけは確かだった。 死ぬことに意味はないと訴えた時、クラトスもクラトスなりに納得したようだけれど、それでも結局、彼は自分の命に重きを置かないのだ。誰かが犠牲にならなければいけない時、クラトスは真っ先にその身を差し出すだろう。もちろん、そんなことはあってはいけないのだと思うが、それでも、今までの旅で、もう一歩間違った方向へ進んでいたら、誰かが犠牲になっていたことも分かっている。ロイドが知らないだけで、犠牲になった人はたくさんいる。ロイドたちの選択のせいで、死んでしまった人がいる。そして、仲間たちも、もしかしたらそういう道を歩むことになっていたかもしれない、という可能性があったことも、ロイドは知っている。ロイドは今、誰かを犠牲にした上で生きている。 それは、分かっているのだ。分かってはいても、そんな世の中は嫌だと思う。子どものようなことを言う、と笑われてもいい。受け入れてたまるか、と思うのだ。嫌だ嫌だ、どうにかしてやる、とあがくことの何が悪いのだろうか。 クラトスは、今でも誰かの犠牲になりたがっている。早く犠牲の連鎖から解放されたがっている。確かに、誰かの命の上に立つことはとても苦しいことだ。長い長い、気の遠くなる程長い時間を生きるクラトスの上に圧し掛かる重圧は、ロイドの想像もつかないものだとも分かっている。それでも、ロイドはクラトスの望みを受け入れることが出来ないし、そんなものこそクソくらえだ。クラトスの不幸を切望する人がいることは否定しない。ただ、ロイドがクラトスに幸せを願うことは、誰にも否定出来ないことだ。そんなこと、させやしない。 リーガルとプレセアはロイドに気を利かせたのだろう、さっさと階下へと下りて行った。が、ほとんど入れ違いに、ゼロスがユアンと競う合うように入室して来た。ユアンを呼んで来る!と告げるや、意気込んで出て行ったことは知っているが、本当にあっと言う間で、ロイドは思わず笑ってしまった。ゼロスもユアンも、憎まれ口を叩きつつも、本当はクラトスのことが心配でたまらないのだ。 「早かったな。とりあえず、安定してる?のかな?」 ベッドサイドに寄せた椅子に座りながら、ロイドが部屋の入り口を振り返る。レアバードを相当飛ばして来たようで、二人共、折角の長い髪がぐしゃぐしゃに乱れていた。 ユアンはそんな様子も気にした風もなく、ベッドサイドを陣取るロイドを押し退けながら、クラトスの顔を覗き込み、そっと頬に触れる。その手付きがやけに丁寧で、椅子ごと身体を押された文句をついつい飲み込んでしまった。その眼差しはクラトスの些細な変化も見逃さすものかと、真摯にクラトスに注がれており、真剣そのものだ。熱を測るように手の平でクラトスの顔を包み込み、親指の腹で今は閉じられている目蓋を優しく撫でる。乱雑に扱ったつもりはなかったが、寝かせる時に乱れてしまった前髪を、ユアンが手慣れた様子で直して、ようやくロイドたちを振り返った。 「……ただのマナ不足だ。眠っていれば、じきに治る」 「…そっか」 ほっと胸を撫で下ろしながらも、ついついユアンの顔をじっと見つめてしまう。ユアンがクラトスに向ける表情は、見たことのないものだった。思えば、協力関係になった今も、ユアンとの関わり合いは薄い。こちらの簡単な挑発に乗ったり、驚いたり怒鳴ったりと、表情豊かなことは分かっていたが、初めて見る表情だった。心配したいのに、それを素直に出さないように無表情を繕おうとしているようだった。ちらりとゼロスに目を向ければ、ユアンと同じような表情をしていて、ついつい緊張が緩んだ。素直にクラトスを心配出来ない奴がここにも居たからだ。 「…なんだ」 ロイドの隠すこともしない不躾な視線に、流石に無視が出来なかったらしい。ユアンは殊更ぶすりと不機嫌そうに表情を顰めていた。クラトスもこれぐらい分かりやすかったらなあ、と、やはり失礼なことを思った。 「やー、なんていうか、二人って仲良いんだなーと思って」 「…何年共にいると思っているのだ」 「千年単位だもんなあ。でもさ、クラトスってあんまり触れられるの好きじゃないだろ?その割に、結構遠慮なく触ってるし」 その様子が、また不自然ではないのだ。手慣れていると言ってもいい。恋人同士であったのならそういうこともあるだろうが、残念ながらユアンもクラトスも、いくら見目が整っていようが男同士だし、互いに恋人と妻があった身だ。その手の想像は膨らまなかったし、何よりユアンがクラトスに触れる手付きは、まるで無意識に自分の顔に手をやるような、手を合わせたり、頭を掻いたり、それぐらい自然な仕草に見えたのだ。そこに恋を連想させる情熱はなかったが、親子やきょうだいの触れ合いのような、相手を慈しむ温かさがあった。 クラトスはもちろん、ユアンもあまり他人の干渉を好むような性質には見えない。それなのに、易々とその距離を許し合っている彼らの姿に違和感を覚えたのだ。もしロイドがクラトスの顔に手を伸ばしても、さっと避けてしまうか、もしくは、ものすごく驚くかのどちらかだろう。けれどもユアンは、意外な一言を告げた。 「これが普通ではないのか?」 「は?」 「近くにいたら、触れたくなるだろう。―――仲間なら」 言いながら、はみ出てもいないクラトスの指に己のそれを絡める。まるで相手の温度を求めるように。そうすることが、自然だと言うかのように。 「お前たちはそうならないのか?」 クラトスの腕を布団の中に戻しながら、ユアンはロイドを見、ついでゼロスへと視線を向けた。面食らったような表情、とはこういうことを言うんだろうな、と、ユアンにつられてゼロスへと目をやったロイドは思った。多分自分も、ゼロスと同じような顔をしているのだろう。 「いや、流石にそこまで濃密な関係じゃないんで」 なんとかゼロスが言葉を絞り出す。確かに、ゼロスが目の前に居ても、ユアンのように指を絡めたり、身体を寄せたりはしない。したいとも思わない。まるで迷子の子どものような、寂しげな顔をしている時は、してやらないと、と思う瞬間も確かにあるけれど。 ユアンは大して興味が湧かなかったのか、そうか、と適当な相槌を打った。ユアンにとってロイドは、クラトスの息子というだけの存在なのかもしれない。何度も命を狙われたものの、それは目的があったからであって、彼自身がロイドに関心を持っているわけではないのだ。クラトスの付属品、という表現に近いかもしれない。それでもこうして反応を返してくれるのだから、付き合いのいい奴だなあと思う。それと、クラトスにベタ惚れしてるなあ、とも。大事で大事でたまらない、ということだけは、聞かずとも分かる。 その時、騒いだつもりはなかったが、クラトスが身じろぎする気配があった。目を覚ましたのかもしれない。大丈夫か?とロイドが尋ねるよりも先に、ユアンが、今まさに開こうとしているクラトスの目蓋に手の平を置き、強制的に目蓋を閉じさせた。いささか強引な手に、ゼロスがおいおい、とユアンを窘めたが、端からこちらに気を遣うつもりはないようで、その体勢のまま、いつものぶっきら棒な口調でクラトスに声をかけた。 「まだ眠っていろ。こいつらもすぐに旅立つ。お前は体力を回復させながら、吉報を待っていれば良い」 ユアンの言葉に反論したいのだろう、クラトスの腕が布団を掻き分けて持ち上がった。ユアンが空いてる方の手でクラトスの腕を掴み、再び布団の中へと押し込もうとしている。しばし攻防が続いた。体力が低下しているクラトスを力ずくでねじ伏せるのは容易いだろうに、力の入りきらないまま無理に力んでいるクラトスの腕の筋を傷付けまいと、クラトスが力尽きて抵抗を弱めるのを待っているようだった。無愛想な言葉とは裏腹に、クラトスの腕を握る強さは、そのまま心配の証だ。声も発せないクラトスを宥めるようにゆっくりと腕を下ろさせて、再び布団の中へと戻していく。ロイドとしてはユアンの行動に文句はなかったが、こちらを丸きり忘れているような空気に、少しばかり不満だった。 「絶対にコレットを取り戻すからさ、その、……父さんはちゃんと休んでてくれよ」 父と呼ぶには照れがあったが、彼の目がこちらを見ていないおかげで、自分でもすんなりと言葉にすることが出来た。クラトスがロイドへと僅かに首を向ける。ユアンだけじゃなくって、俺もいるんだぞ、と主張出来てとりあえず満足したロイドは、お前はいいのか?とゼロスを肘でつっついてやった。別にいいって、と、天使聴覚を持つ二人にどれだけ効果があったのか分からないが、ゼロスがロイドにだけ聞こえるように小さく耳打ちをした。 「お前の息子もああ言っているではないか。ちゃんと休むのだぞ。勝手に抜け出したり、ノイシュに構っていたりなど、するのではないぞ」 まるで子どもへ言いつけるようだったが、かつてそういうことが何度もあったのだと覚らせるには容易いやり取りだった。クラトスもユアンの言葉にようやく諦めたようで(正直ロイドは、この強情な男が、些細なこととは言え、自分から折れたことに少なからず衝撃を受けた)、深いため息をついてクラトスも力を抜いたようだ。ユアンもそれを感じ取り、すっと手の平をどけた。が、やはり離れていくその温度が惜しかったのか、戯れるように指先が頬を撫でて行った。 ユアンになりたいと思ったわけではないけれど、無遠慮に触れていくユアンの指が羨ましいな、と少しだけ思ったロイドだった。 *** お題、どこいった…?状態ですね。 なんか、みんな好き勝手し出すんですもん。 あ、こんだけいちゃいちゃしておきながら、ユアクラではありません。あくまで仲間です。 PR |
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