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お題は、as far as I know さんからお借りしました。

ゲーム本編の時間軸で、ユアンとクラトスちょっとだけノイシュです。

流れ的には『ほんとうは遠くで』の続きですが、これだけでも独立してます。

ただ、コンセプトは同じ、
仲良すぎるユアクラに、もやっとしたものを感じちゃうロイド+αなので、

先に『ほんとうは~』を読んで頂いた方が雰囲気が掴みやすいかと思います。







 コレットを無事取り返したロイドたちだが、ヴェントヘイムで封魔の石を得たことで、一旦その地を脱出した。ただの石ではないことは、マナが感知出来ないロイドでも察することが出来たが、用途が全く予想つかなかったのだ。これはクラトスかユアンに聞いた方がいいのでは、とあっさりと結論が出た。クラトスの様子が気になっていたこともあり、ミトスの存在に後ろ髪を引かれながらも、ロイドの家へと戻ることが決定したのだ。

 テセアラベースからシルヴァラントベースへと転移したついでにユアンにも声をかけたのは、万が一クラトスの容態が悪化していた時の保険だ。ユアンも文句を垂れてはいたものの、それ以外の抵抗はなく、相変わらずぶすりと不機嫌を装いながらも、ロイドたちのレアバードの後ろに黙って付いて来た。心配ならこちらに遠慮せず側に付いていればいいのに、とロイドは思うが、筋金入りの意地っ張りはそういうわけにはいかないらしい。

 ロイドがコレットの手を引いて、彼女が無事だという報告も兼ねて、勝手知ったる我が家、とドアを開ける。ただいま親父!と元気ありあまる声でダイクに挨拶をしながらも、視線は二階へと繋がる階段へと向けられている。駆け上がりたい思いを押し殺して、コレットが転ばないように歩幅を合わせながら、それでも少し急いで階段を登る。

「クラトスー、元気になったかー?コレット連れてきたぞー?」

 本当に病人が寝ていることを想定して声をかけたのか、とリーガルやリフィル辺りが密かに疑問を抱いたことはさておき、ロイドはそろりと中を窺う。ダイクの手によって作られた部屋は、17になったロイドには少々手狭で、それゆえ、簡単に中を一望出来た。ベッドの上で大人しく眠っていると思っていたクラトスの姿は、そこにはなかった。見落としようもない。確かに、クラトスは部屋にいない。それならばベランダだろうか、と外を覗き込むのと、階下――正確にはノイシュの小屋から怒鳴り声が響くのとは同時だった。


「お前は!私の言葉を本当に聞いていたのか!その耳は飾りなのか?!私は眠っていろと言っただろうが!!それをなんだ、ノイシュと遊んでいるだと…!ノイシュ!お前もお前だ!これを甘やかすなと私は昔から言っているだろう!!」


 ロイドはコレットと顔を見合わせて、ベランダから身を乗り出す。旅の足がレアバードになったことや、危険が予想されるミトスの城にノイシュを連れて行くのも憚られて、ノイシュはおいて行ったのだ。元々の主人であるクラトスが近くに居ることが余程嬉しいのか、尻尾をはちきれんばかりに振って、ロイドたちを見送っていたものだが。そのノイシュに背を預けて座っているクラトスの胸元を掴んで、両手でクラトスを揺さぶっているユアンの姿がそこにはあった。怒ると周りが見えなくなる性質らしく、必要以上にクラトスに顔を近付けている。ユアンの怒鳴り声は上まではっきりと聞こえる程の大音声だった。近距離で聞いてさぞかしクラトスも迷惑だろう。それを表すように、クラトスの表情には明らかな辟易が浮かんでいた。のどかに日向ぼっこをしていたところで、ユアンの喧騒を浴びせかけられたら、誰でもあんな表情になるだろう。
 クラトスもユアンの言いつけを守らなかった負い目があるのか、さっと視線をそらした。あ、珍しい、とロイドは思ってしまった程だ。クラトスはどれだけ自分に不利でも、簡単に理論武装してしまうせいで、最後にはうまく言いくるめられていた。それが、ユアンには一言の反論もしないまま、気まずげに顔を伏せている。自分に無頓着なところがあることは気付いていたが、その都度ユアンが指摘していたのかもしれない。
 本来ならユアンと一緒に怒るべき立場だということは分かっていたが、クラトスに対する無条件の信頼と言うのだろうか。クラトスならば大丈夫だ、という根拠のない自信があった。それに何より、真っ先にユアンが沸点に達したせいで、タイミングを逃したとも言えた。



 下では大人気ない大人たちの会話が続いている。

「ノイシュは悪くないだろう。お前は、私に何かあれば、すぐにノイシュへと濡れ衣を着せたがる」

「お前に言っても効果がないからだ。また共に過ごせるのが嬉しいのは分かるが、まだ春先で風も冷たい。ノイシュでは暖を取りきれまい」

 二人の間に挟まれて、ノイシュの目がおろおろと二人の顔を行ったり来たりしている。ユアンはクラトスの反論を最初から聞く気がないようで、胸倉を掴んでいた手でそのままクラトスの身体を持ち上げて、強引に立ち上がらせた。クラトスがふら付いたのはただの立ちくらみだとは思うが、クラトスが咄嗟にユアンの肩を掴んだように、ユアンも迷わずクラトスの身体を引き寄せた。もし、あのクラトスの相手がロイドだったら、彼は掴まるものを求めた結果とはいえ、ロイドを頼ってくれただろうか。そんなことをふと思ってしまったロイドをよそに、コレットはのんびりとしたもので、クラトスさんとユアンさんって本当に信頼し合ってるんだねぇ~と下の様子を微笑ましそうに眺めていた。


「このまま運んでやろうか?」

「…必要ない」

「この前よりは顔色はいいが、まだマナの量が不足していることは確かだ。時折ふらつくだろう」

「…時折だ。頻度は減った」

「…やはり、このまま運ぶか」

「不要だ」

「肩ぐらい貸させろ。強情な奴め」


 クラトスが抵抗出来ないことが分かって、ユアンは嬉々とした様子だった。ちょっと近すぎやしないかい…?としいなはたまたま隣りに居たリフィルに耳打ちすると、彼女も額を押さえてそれに頷いた。彼女たちだけでなく、満場一致でその意見に賛成だ。身体が近いのもそうだが、顔が近過ぎるのだ。怒鳴りつける為にすごむ必要があったとしても、今はそこそこ穏やかに会話をしている。それなのに、その距離は変わっていないのだ。
 彼らの筒抜けな会話から察するに、このままさっさとユアンが肩を貸してクラトスを上に運んでくれると思っていた面々だったが、ユアンの指が名残惜しそうにクラトスの前髪を掻き上げたかと思ったら、慣れた仕草でクラトスの額に唇を落とした。額を出しているところなど見たことがないせいで、皆が皆、ついつい視線で追っていたせいで、見なくてもいいものを見てしまった気分だ。ユアンとクラトスは、身長差がほとんどない。"それ"をするには容易かっただろう、などとのん気な分析をしている者など、一人もいない。

 あ、と思わず声を出してしまった。というか、出るだろう!他の面々も同じ思いだったようで、さっさと目をそらせばいいと分かっていながらも、なんとなく視線を外しがたくなっていて、この場にいる全員がその場面を見つめる羽目になってしまっていた。男同士のキスシーン(額とは言え!)だ、見苦しいはずなのだが、見た目が整っているおかげか、そういった不快感はなかった。あまりにもなめらかに行われた一連の流れは止める間もなく、ただただ場の空気が固まっていた。なんとも気まずい沈黙が流れる。その呪縛から一番に脱出したのはゼロスだった。二人共に関わりがあったせいだろうか、誰よりも居た堪れなかったようで、わーー!とわざとらしい叫び声を発しながら、果敢にもユアンとクラトスの間に割って入り、「近い近い!あんたら近過ぎ!」と、まるで二人の間を繋ぐ見えない糸を断ち切るように、二人の間に手を差し入れた。自分たちが周りにどのように見えているのか全く分かっていない二人は、なんだ?と首をかしげていたが、ゼロスはこの場を代表して言わなければならなかった。これ、ホントは俺の役割じゃないと思うんだけどなあ!と、ちらりと上を見上げたゼロスと、ロイドの目が合う。

「あんたら近過ぎなんだよ!教育に悪い、教育に!こちとら、未成年も居るんだぞ!!」

 わ、ゼロスが先生みたいなこと言ってるよ~、とコレットがほのぼのする横で、ロイドはコレットに同意することも出来ず、よく分からないダメージを受けてぐったりするのだった。





***
別にデコちゅーとか普通だし。四人でよくやってたし。おはようとおやすみの挨拶はむしろこれだったし。

…悪ふざけが過ぎたことは、多少、反省は、してます。。。
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