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前回のあらすじ(残念ながらそんなものはありませんが、言葉の雰囲気だけ)

オリジンから突然の召集をかけられたロイドたち。無数に広がる過去と未来の枝葉の一つが、魔族に冒されようとされているらしい。ロイドたちはオリジンの頼 みに答え、過去へと飛ぶ。それはロイドたちの世界ではない、けれども確かに存在している四千年前の古代大戦真っ只中の世界だった。ロイドたちは図らずも古 代英雄・ミトスたちの軌跡を知ることとなる。まだ英雄と呼ばれる前に、ミトスたちの――――。


オリジンの力及ばず、数組に離れ離れになってしまったロイドたち。コレットはプレセアと共にどこの町とも知れない、人気のないひっそりと静まり返った町の一角で途方に暮れていた。

「困ったねぇ~」

「はい、とても困りました」

「ここどこだろうねぇ~」

「テセアラでしょうか?それともシルヴァラントでしょうか?」

「ねこにんの里だったらいいのにねぇ~」

「……」


***


このシリーズはクラトスだけ、女体化しています!

(古代英雄全員性別逆転も考えたけど、流石に捌ききれないな、と思って)
(時間軸的に、ED後だけどクラトスさんはまだデリスに行ってないってことで。クラ×クラには食指が動かなかったので、クラトスさんはダイクさん家で療養中です。)






 コレットとプレセアが途方に暮れていると、角の向こうから話し声が聞こえてきた。段々と近付いてくる声にプレセアは少し身構えたが、コレットは、あれ?この声って、とむしろ身を乗り出した程だ。危ないですコレットさん、とプレセアはコレットの手を引いたが、だいじょぶだよ~と朗らかに言うものだから、プレセアも苦笑するしかない。

 程なくして、曲がり角から二人の人影が姿を現した。一人はよく知ると言わないまでも、見知った者だ。もう一人は言葉を交わしたことはなくとも、二人の記憶に強烈に焼き付いている姿だ。ユアンとマーテルだった。出掛かった驚きの言葉をなんとか飲み込んだ二人だったが、ユアンとマーテルも二人の姿に驚いたようで、目を見開いている。

「わたしたち、彼女たちを見過ごしたのかしら?」

「そんなわけあるまい。私はちゃんと見張っていたぞ」

「それなら、ミトスとクラトスが見落としてしまったのかしら?あの二人に限って、それはないと思うのだけれど」

 言い合いながらも、コレットとプレセアに近付いてくる二人。コレットたちもどうするべきか分からず、ただ内心の驚きを顔に出さないようにするしかない。

「あなたたち、どうやってここに来たのかしら?」

 柔らかに問うマーテルのその姿は、マーテルと同化した時に垣間見た姿そのままだった。コレットの中では、この世界で一番優しいひと、という印象が強い。とても強くて優しくて、その優しさで人の悲しみを柔らかく包んでくれるひと。少しでも近付きたい、理想の女性像そのものなのだ。

「それが、その、なんて言ったらいいんでしょう。どうしよう、プレセア」

「ここは本当のことを言った方がいいと思います。どの道わたしたちは、彼らの助力がなければどうしようも出来ませんから」

「そうだよね!ええっと、わたしたちは、ここからうんと未来の世界から来たんです」

 え?とマーテルが首をかしげる。当然と言えば当然で、プレセアは内心頭を抱えた。論点がズレていく、とはリーガルもうまく説明したもので、コレットは要点をまとめて話すことがうまくはない。見た目の年齢からして自分が出張るのはあまり説得力がないとプレセアは思ったものの、そうも言ってはいられないようだ。
 マーテルは根気よく、それはどういうことかしら?と優しく問い掛けるが、もう一人の存在・ユアンは相変わらずの短気っぷりで、意味が分からん、もっと分かりやすく話せ、と既に怒っている。あらユアン、あまり子どもを怖がらせてはいけないわ、と軽く窘めているのを見る限り、ユアンのあの剣幕は通常運転のようだ。

「ごめんなさいね。彼、悪いひとではないのよ。ただ少しせっかちなだけで」

「おいマーテル。あまり話し込んでいる時間はないぞ。そろそろクラトスたちと合流せねば」

「そうだったわ。でも彼女たちを放ってはおけないでしょう?そうだ、途中まで一緒に来てもらいましょう。詳しい話も聞きたいし」

「だが」

「あなたたちはどうかしら?確かにユアンはちょっとこわいひとだけれど、悪いひとではないわ」

 知っています。とは言えず、曖昧に頷く。それを同意と取ったらしいマーテルは、二人の手を取って駆け出した。おいマーテル!とユアンが追い掛けてくる。ほらほら早くしないと、ミトスとクラトスに叱られるわ。マーテルが首をひねりながら、ユアンに呼び掛ける。素直に同意するのが悔しいのか、仕方がないと言いたげに軽く舌打ちをしていたが、それがポーズだということはマーテルはおろか、プレセアにも分かっていることだった。



 マーテルに手を引かれて辿り着いた先には、プレセアとコレットがよく知る二人の姿があった。マーテルが言っていたように、既に何かを済ませて待っていたようだ。

「もう!遅いよ二人共!って、誰?その人たち」

「道の途中で保護したの。放っておくことも出来なかったものだから」

「…ユアンは納得していないようだが」

「そんなのいつものことじゃん!とりあえず、仕掛けは完璧だから、早く逃げちゃおう!」

「無事セット出来たのだろうな?」

「お前の設計が間違っていなければ、あと五分で爆発する」

「間違っているわけ、

 ないだろうが、と続くはずのユアンのセリフは、派手な爆音に掻き消された。やはり、時間通りにはいかない、か、とクラトスがぼそりと呟くと、ユアンは顔を赤くしていたが、咄嗟に反論の言葉が思いつかなかったようだ。

「とりあえず、逃げないと!ええっと、君たちも、一緒に来た方がいいよ?」

「うん、よろしくね」

「よろしくお願いします」

「和んでいるところ悪いが、早く逃げるぞ。追っ手に追いつかれては面倒だ」

 クラトスの発破で、六人が一斉に駆け出す。コレットとプレセアはその最後尾で、走りながら、四人に聞こえないように声を落とす。

「四人とも、本当に仲が良かったんだねぇ~」

「そうですね。私たちの知るクラトスさんとユアンさんより、随分と表情豊かなように見受けられました」

「ね~。クラトスさんもユアンさんも、どこか幸薄そうだけど、この世界では幸せそうでよかったね~」

「……」

 というよりも。真っ先に触れなければいけない問題を、プレセアはスルーしていた。コレットがそれに触れないのは、単純に彼女が天然だからなのか、気付いていないのか。

「…クラトスさん、女性ですね」

「あっ、そうだね、そうだよね!わたしも思ってたんだ!美人だよねぇ~」

「…そうですね」

「びっくりしたよねぇ。でもミトスとユアンさんは男の人だね」

「はい、そうですね」

「でも違和感とかないよねぇ。わたし、もしかしてわたしの知ってるクラトスさんも女の人だったかな、って思っちゃったぐらいだもん。でもロイドは父さんって呼んでたから、きっと男の人なんだろうねぇ~」

「コレットさん」

「うん?どしたの?プレセア」

「やっぱりコレットさんはすごいですね」

「そんなことないよぉ~」

 えへへ、と笑うコレットに、この人のずれた論点とうまく会話するのは、やはりロイドでないと無理だな、とその毒気のない笑顔を眺めながら思うプレセアなのだった。





***
この後、クラトスとユアンによる尋問タイムが始まるんですが、所々姉弟の絶妙な合いの手が入るので、場は和やかなままです。このまま古代勇者PTと合流してもいいんですが、一旦分かれます。とりあえず、なんとなーくな触りが書けたので、一応満足といいますか。

そのうち、ロイドとクラトスを遭遇させたり、ジーニアスとミトスを遭遇させたり、ゼロスとクラトスを遭遇させたりしたいと思います。
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