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お題は、as far as I know さんからお借りしました。

古代勇者御一行です。

クラトスの天使疾患を捏造してます。







 ミトスの魔術の完成に間に合わない、と判断した後のクラトスの動きは早かった。魔物とマーテルの間に強引に身体を割り込ませ、既に振り上げられていた魔物の刃から庇うように、クラトスも剣を繰り出した。その一撃で、魔物は絶命した。ほっと息をつく面々だったが、こちらに背を向けていたクラトスが、剣を鞘に仕舞いながら振り返ったその姿に、思わず言葉を失った。利き腕ではない方の肩が、ざっくりと斬れているのだ。三人の固まった表情にクラトスも首をかしげて、

「どうした。誰か怪我をしたのか?見たところ、大事ないようだが」

 と、三人の顔を見回した。ぽたり、と、クラトスの腕を伝って血が垂れる。それが視界に入ってようやく、クラトスはしまったと言いたげに視線を落とした。マーテルが慌てて治癒術の詠唱に取り掛かったが、ユアンがそれを制する。どうして、と目で問うマーテルをよそに、ユアンは彼女の横を通り抜けて、クラトスの肩を揺さぶった。裂けて血が溢れ出ている箇所にわざと触れたのだ。あっと言う間にユアンの手が血で赤く染まる。マーテルが短く悲鳴を上げて、ミトスもやめてよ!と声を荒げた。

「おいクラトス!いつからだ、いつから痛覚を失っている?食事の量が減ったことも、睡眠を摂らなくなったことも見過ごしてきたが、そんな状態になっているとなれば看過出来ん!おい、いつから、そんな出来損ないの感覚を持つようになったのだ!」

「ユアンやめてよ!傷が悪化しちゃう!姉さま、早く治してあげて!ひどい出血だよ!」

 ええ、もちろんよ、とマーテルが今度こそ詠唱を始める。けれどもユアンは、その傷口から手を離さなかった。ミトスが自分のことのように、痛そうに顔を顰める。顔を背けているクラトスと目が合った。お前がそのような顔をする必要はない、と言っているかのようだった。あなたが痛くないと言うのなら、僕が主張するしかないじゃないか。ミトスもクラトスに近寄り、強引にユアンの手をどかせた。あまりの血の量に思わず眩暈がした。

「クラトス、大丈夫?痛くないなんて嘘だよね?ただの強がりだよね?クラトスってば、無駄に我慢強いんだもん、これもやせ我慢でしょ?」

 まるで縋るようにそう訊ねても、クラトスは力なく首を振るだけだった。マーテルの治癒術が完成する。クラトスの身体をふわりと包み込むルナ・アスカの光に、見る見るクラトスの傷が消えて行く。ほっとするのも束の間、クラトスの身体がぐらりと揺れる。慌ててミトスは手を伸ばすが、それよりも先にユアンがクラトスの身体を抱き止めた。

「ク、クラトス大丈夫なの?!倒れちゃったの?!」

「ただの貧血だ。今日はこの辺りで野宿だな」

 クラトスを横抱きに抱えなおしている間に、マーテルも駆け寄ってくる。クラトスは続けざまの戦闘で、忙しなく前衛で動き回っていたにも関わらず、一滴の汗も掻いていない。マーテルは乾いたクラトスの顔を、額から頬にかけて撫で付ける。確かにユアンの言う通り、血の気がないのだ。

「目が覚めたら三人で説教かしら」

「そうだな。この馬鹿にはそれが一番堪えるだろう」

「ねぇ、クラトスの痛覚がなくなっちゃったのって、やっぱりあのエクスフィアってもののせい?」

「多分、な」

「一度、テセアラの魔導研に行った方がいいよ。クラトスは必要ないって言うかもしれないけど、この状態だって、絶対普通じゃないでしょ?もしかしたら研究所なら何か分かるかもしれないし、治す方法だってあるかもしれないし」

「だが、お前たちは手配されている身だぞ。捕まりに行くようなものだ」

「決めた!一度テセアラの王都に行こう。大丈夫だよ、今までだって何とか捕まらずになってたし、なんとかなるって!」

 そうね、そうしましょう、とマーテルも賛成している。ここで反対しても決定は覆らないと、今までの経験から分かっているユアンも、内心では大反対だけれども、彼らに従うしかないのだった。





***
やっぱり、思う通り動いてくれない彼ら。。。なんていうか、一人一人への愛情が強すぎて、動かすの難しい。
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