伊達さんと幸村の話、です。
幸村さんはつい跪かせたくなるので不思議です(…)
時間軸で言うと、一番初めになります。
幸村の描写が未だに手探り中です。
真田幸村という男の職業を一言で説明することは、至極困難である。とある界隈では、どんな有名人よりも知名度が高い。が、そのほとんどが、彼の顔を知らない。名前だけが一人歩きをしている状態なのだ。凄腕の傭兵、成功率100%の暗殺家、掃除家と表現する人間も居た。真田幸村とは、まさにそういった人種である。単独で行動することを好み、破格の報酬と引き換えに、どんな依頼もこなすという。既に風化しかかっている話だが、一度、彼を討伐する為に立ち上がった組があったが、呆気なく返り討ち、その組は全滅し解体した、というのだが、その真偽を知る者はいない。
よって、容姿に関しての情報は皆無と言っても過言ではない。どのような顔をしているのか。身長は体形は?そんな些細なことすら出回っていない。ただ噂が噂を呼び、日本刀を自在に操る、黒髪の殺人鬼という、本人にとっては至極迷惑な二つ名がついてしまっていた。
さて、その真田幸村だが、たった今、彼の人生上初めての危機を迎えていた。おろし立てのスーツは泥に塗れ、降り出した雨をたっぷりと吸い込み、ずしりと重い。小さな傷に雨が触れる度にずきずきと痛んだが、特に重傷なのはふくらはぎの銃創だ。掠った程度だが、利き足を傷付けられ足としての機能を果たしていない。うつぶせに地面に伏され、その上に圧し掛かる人間が一人。両脇からは、そんな幸村が逃げないようにと、小型の銃が突きつけられている。少しでも抵抗したら、脳天をぶち抜く算段だろう。厄介なことになった、と幸村は心の中で舌打ちをし、唇を噛み締めた。銃で殴らせたせいで、口の端が切れていた。ああこんな不様な怪我をしたのは久しぶりだ、などと頭ののん気な部分でぼんやりとそんなことを思う。後ろ手は締め上げられており、みしみしと骨が音を立てているような錯覚を感じた。乗りかかっている人間の体重をもろに背骨が受け止めていて、この人、もう少し減量すべきだ、とやはり場に相応しくない能天気なことを思った。幸村は己の抵抗の無意味さを分かっているのだ。
「三人がかりでやっと、って感じだな。ホント、あの動き人間かよ。あの伊達家の三人相手に互角とはなあ。」
「三人でも不足であったわ。だが、これで間違いなくあの男は、真田幸村、ということだろうな。」
幸村を拘束している三人の上司に当たる人間だろう。幸村の姿を見下ろしている。さぞその眺めは良いことだろうな、と幸村は皮肉げにその顔を見上げた。一人はライフル銃を背負った八咫烏、一人は、
「良い格好よな、真田幸村。だが、わしは再三忠告をしたぞ。わしに従うならば、こちらから手出しは一切せぬ、とな。」
「先程の援護射撃はあなたですか。まったく余計なことを。一人に対して、三人も四人も相手をさせて、」
「それほどまでに、わしはそなたを買いかぶっておる。それに、あそこで撃たねば、わしの大事な部下どもが、腕を失い首を飛ばしておったからの。」
「意地の悪い人。」
龍、だ。その眼帯の下に、龍を飼っているに違いない。幸村は確信もなく、そう信じた。不遜な、己を見下すその眼差しすら、彼には相応しかった。
***
端折って端折って端折りまくったら、こんなにも短くなりました。お遊びが過ぎますね。自重しませんが(…)
最近発見したんですが、私結構孫幸が好きらしいです。殺伐としたところが(お前は、また…!)
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