× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 孫市と幸村の話です。ギャグです(当サイト比) 政宗に呼び出され、たった今次の指令を聞き終えた幸村は、とりあえず溜め息を吐き出すことで今後の憂いを何とか解消しようとした。隣りに立っていた孫市は、それを耳ざとく聞きつけ、うっわ~幸ちゃん、それは流石に俺でも傷付くわ、と泣く真似をした。これだ、これが幸村は苦手なのだ。軟派な彼の行動言動は、今まで幸村の周りになかっただけに、対処に困っていた。幸村がどうしたものか、ともう一度溜め息を吐けば、今度は、同様に呼び出されていた成実に泣き付いた。 「俺だって、できることなら成ちゃんとおデートしたかったのに…!」 「孫市、それは言ってくれるな。おれだって、こんな怪我していなければ…!」 元気に飛び跳ねているせいで分かりにくいが、成実は先日一悶着の際に負傷している。肋骨の骨折はくっ付くまでに時間がかかるのだ。彼の負傷は、やんちゃが過ぎた彼のせいでもあるけれど。 「俺は仕方なく、仕方なくだぞ、あの冷血漢の塊と一緒に留守にするけど、その間浮気なんてするなよ。」 「孫市こそ、幸さんに手出しして強制送還、なんてならないでね。」 慣れていることもあり、既に目の前の光景に興味を失った政宗は、書類に目を通している。ふむ、情報収集が少しばかり足りぬな、という呟きは、幸村に対して何の慰めにもならなかった。 「それで、わたしはいつまで、この恋愛ごっこを見守っていればよろしいんですか?」 絶対零度の笑み、とはまさにこのことを言うのだろうなあ、と思ったのは、成実同様に呼び出されていた小十郎だ。過保護、と言われがちな小十郎だが、政宗の様子からも分かるように、中々放任主義であるようだ。自分に火の粉が降りかからない限り、勝手にすればいい、責任は自己で管理しろ、という教育方針と言ったところだろうか。 場の喧騒が静まったのを見計らった小十郎が、皆さん、そろそろお仕事に戻ってください、と声をかけた。はーいと間延びした返事をした成実が真っ先に駆け出す。あーあ恋人は素っ気無くってさびしいわ、と今度は幸村との距離を縮めたが、それを見越した幸村が、すすっと数歩下がった。これでプラマイゼロだ。 ああまったくもって悪夢としか言いようがない。幸村は作戦が始まる一週間前から、孫市との共同生活を強いられる羽目になってしまった。コンビを組む以上、お互いの呼吸を知る為、と銘を打ってはいるが、大方政宗が幸村の嫌がる顔を楽しんでいるに違いないのだ。厄介なところに属してしまったものだ、と今更ながら後悔が襲ってくる幸村であった。 「幸ちゃん、ちょっと待ってってば、ねえ幸ちゃん、幸ちゃんってばぁ、ゆーきー 「私の名はそのように可愛らしいものではありません。人の名前は正確に呼んで頂けませんか?」 耳障りなその声に、幸村は足を止め振り返った。孫市はいやぁつれないこと言うね、と肩を竦めつつ、幸村の早歩きのせいで離れてしまった距離を急いで縮めた。そのコンパスは偽りですか?と視線で問えば、幸ちゃんには負けるって、と適当な答えが返ってくる。ああもう、この手の人間は本当に苦手なのだ。 「成ちゃんは幸さんって呼んでたのに、それはいいわけ?」 「あなたに成実さんの可愛げが半分でもありますか?ないでしょう?区別です区別。」 そう言って、またすたすたと歩き出そうとする幸村を、孫市が腕を掴んで引き止めた。咄嗟の接触に、幸村は思わず振り払ってしまった。他人との触れ合いに過剰反応してしまうのだ。軽口とは合わない、殺気すら滲ませた反応に孫市も驚いたようで、あ、ごめん、と素直に謝罪をした。ああ違う、確かにあなたの軽い空気は不快ですけど、これはわたしの嫌な癖が出てしまったわけで、と心の中で弁護。言葉にしてしまったら、彼が調子に乗ることなど目に見えている。 「あー、ここは俺が譲歩するから。でもなあ幸村、もうちょい懐いてくれてもいいだろ?」 「懐く?誰が、誰に?」 あんたが、俺に。と交互に指を差したが、幸村の冷ややかな視線を受けて、冗談デス、と指を下ろした。もう何度目かになるか、最早カウントにも飽きた溜め息を幸村は吐き出し、無駄口を叩いているより、足を動かしたらどうです、と幸村は再び踵を返した。孫市に背をさらしたのがまずかった。彼の配慮の足りない悪戯心がむくむくと姿を現してしまったようだ。幸村が一歩を踏み出す、その前に、孫市は更に距離を詰めて、彼の臀部を一撫で。瞬間幸村の背筋に走った嫌悪感はどれ程のものであっただろうか。幸村の首筋には、くっきりと鳥肌が立っていた。 「まごいちさん?」 一つ一つの音が強調されたそれは、名を呼んだ、というよりは、何してくれるんですか、このすっとこどっこい、とでも言いたげな音を含んでいた。激しく、怒っている。流石にやりすぎたか、と孫市も反省するが、彼の言い訳など聞いてやるものか、と幸村はがん!と孫市を壁に叩きつけた。孫市を壁と己の身体で挟み込み、冷ややかな視線を孫市の顔に近付ける。ドラマでよく見る、安っぽいチンピラの脅し文句は特にこわくも何ともなかったが、この時の幸村の目は鬼気迫っており、うっかり次の言葉を失ってしまった。 「わたしは、こういった冗談が好きではありません、と何度も申し上げたでしょう?成実さんがご親切に忠告して下さったのに、もうお忘れですか?作戦が始まる前から、半殺し、なんて事態はお互いに避けなければならないのだと、何故分かりませんか?」 分かって頂けました?と孫市の唇を幸村の吐息がふっと吹いた。幸村の頭を誰かがどんと押せば、そのまま接吻でもしてしまいそうだ。孫市は幸村の唇をじっと見つめた。ああ、至近距離で見ても、きれいな顔だ、などと幸村がもしその頭の中を覗けるものならば激昂するだろうことを、今この瞬間に思った。懲りない男なのだ。 「幸村、」 「何ですか。」 「油断大敵。」 息が触れるほどの距離だ。少しだけ孫市が顔を突き出せば、容易く幸村のそれに触れることは出来た。ちょっとした意趣返しだ。ナンパ師としては、彼に圧されたままでは気がすまない。これで彼が、口許を押さえつつ頬を赤く染めればそれはそれで、可愛らしい話として思い出になるだろう。孫市が期待したのは、そんな流れなのだが、実際は――――、 「どちらが油断大敵ですか。」 冷静な、氷のように冷たい幸村の声と共に、下半身に衝撃。大事な急所に幸村の膝蹴りが炸裂した。孫市はあまりの痛みにその場に蹲った。幸村の視線を感じたが、今は気にしていられない。本当に、彼の膝蹴りは容赦がなかったからだ。 「そこが機能ダウンする前に、慎みという言葉を覚えられてはいかがですか?」 では、わたしは先に行ってますから。と未だ痛みから起き上がれない孫市を残して、幸村は早歩きで廊下を進むのだった。 *** 慣れる前は、幸村はこんな感じだと思います。ぶっちゃけ、続きません(えー) 成ちゃんは、なるちゃんと呼んであげてください。本名はしげざね、ですが、それじゃ可愛くないじゃん!と、自分からなるみちゃんって呼んでーと寄ってきます。でもなるみって呼んでるのは、今のところ孫市と綱元だけです。幸村はしげざねさんって呼んでますから。 ちなみに、孫市と成実のいちゃいちゃは遊んでます。冗談の通じる二人、ということで、ここではよろしく。 PR |
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