続きです。
あんまりダラダラしたくないんですが、性急にことを進めるのも、ねぇ?
情緒ある生活が送りたい。(と言っておきながら、自分の服装はひどいものです。)
多分、六話、になりそう(ああああ)
一人相撲が上手で、ホントすんません。
お腹空いた(がっつり夕飯食べましたけど何か?)
ふと、夜中に目が覚めた。どうせならば用を足して来ようとむくりと起き上がれば、ベッドサイドに置いてある水が目に入った。電気は豆電球が灯っており、物の輪郭がおぼろげに見えた。ペットボトルに入った水は、既に部屋の温度でぬるくなってしまっていて、どうせならば冷えたものが良い、とぼんやりとした頭でそう思った。地に足をつけ、ああそう言えばここは俺の知る家ではないのだった、と思い出す。ドアの位置が中々記憶と繋がらず、無駄に部屋の中をぐるぐるしてしまった。出っ張った本棚が、ドアの死角になっていたのだ。部屋を出ても、廊下には薄っすらと明かりが灯っていた。三成の為なのか、元々家主が明るい場所を好むのかは分からなかったが、三成にとっては好都合である。おぼろな記憶を手繰り寄せ、まずはトイレへと足を向ける。
トイレからの帰り道、三成はソファに源二郎が眠っているのに気が付いた。先も通ったが、気付かなかったのだろう。気配が希薄というよりは、お上品にソファに収まっているせいで風景と同化してしまっていたようだ。寝息は聞こえない。小さいソファではないが、上背のある彼にはいささか長さが足りない。頭を肘掛の部分に乗せ、足は飛び出していた。それでもお上品、と思ったのは、いかにもすやすやと眠っていたからではないだろうか。顔からは一切の表情がなくなっていた。三成は好奇心に負け、ふらりと彼の傍へと寄った。顔を覗き込んでも、彼は目を覚まさなかった。
(整った顔をしているな。)
三成は彼の寝顔にそう思った。美意識の強い三成である。人にそういった感想を抱くことは稀である。薄い唇にスッと通った鼻筋、きりりと引き締められた眉と、穏やかに笑う、今は伏せられた目。案外に睫毛が長い。薄明りの下の彼の頬は、まるで白磁のようである。彼の頬も、先程の彼の指のように冷たいのだろうか。何となく、そんなことを考える。躊躇いがちに、のろのろと三成の指が伸びる。指先が震えているのは、体調が悪いせいではない。ああ、なにをおれは緊張しているのだろう、と頭の隅で考えながらも、彼との距離は段々と縮まり、そして―――――、
パチ、と睫毛が瞼を叩いたのではないか。それほどまでにはっきりと、彼は唐突に目を開けた。覗き込んでいた三成と、寝起きでありながら寝ぼけた様子のない源二郎の目が、至近距離でかち合う。気まずそうに三成は顔を引っ込めたが、腕の位置は置き去りにされていた。源二郎が不審そうに彼の指先を見つめて、三成は己がしようとしていたことが、他人の目にどう映ったのかを、ようやく理解した。眠っている、しかも男に、俺はなにをしようとしていたのだ。
源二郎は例のはにかみを浮かべながら、別段機嫌を損ねた様子もなく、ゆったりとした動作で身体を起こした。時計は何時を指しているだろうか。寝室にある時計と同じ型のものがリビングにも設置されていたが、闇に呑まれていて三成からは見えなかった。
「…眠れませんか?ああ、それとも喉が渇いたんですか?」
源二郎は先の三成の行動には触れなかった。彼の気遣いか、それとも大したことではない、と思ったのだろうか。何もなかったからいいだろう、程度の気軽いものかもしれない。自己防衛力の低い男だ。
「少し、喉が渇いてな。それよりも、起こしてしまったか。悪いことをしたな。」
「元々眠りが浅い方ですので、あまり気になさらず。わたしも喉が渇きました。今、入れてきますね。」
源二郎は寝起きとは思えぬはきはきとした動作で、三成の前を通り過ぎて行った。が、すぐに両手にコップを持って戻ってきた。どうぞ、と言った源二郎の笑みに、じんわりと胸が熱くなった。彼と共有する空気は、いつだって穏やかであたたかい。
先ほどまで源二郎が眠っていたソファは、じんわりと彼の体温が染み付いていた。照れ臭いような、恥ずかしいような気分でその温度を受け止めていた三成だが、ようやく、己が彼のベッドを占拠しているせいで、こんな寝苦しいだろうソファで眠らなければいけないのだと気付いた。この男は、愚痴の一つ、いや、ぼやきの一言もない。疲れやしないだろうか、と三成は源二郎の横顔を盗み見ながら思った。
「三成さん。」
唐突に声をかけられ、三成は面白い程に動揺した。耳に優しいその音が、己を呼ぶためだけに発せられたのだという考えが脳裏を過ぎり、胸が高鳴った。こんな感情は知らない。赤の他人に名を呼ばれ、それが嬉しいと思うなど、そんなそんな、
「そう呼んでも構いませんか?」
三成が頷けば、源二郎がふわりと笑った気配がした。三成は何故だか直視できなくて、空っぽのコップに視線を落とした。が、その視界の中に突然源二郎の腕が伸びてきて、ひょいとコップを奪ってしまった。ああ俺は一体なにを見つめて誤魔化せば良いのか!三成は咄嗟にコップの行方を目で追いかけ、その末に源二郎の穏やかな目とぶつかった。
「おかわり、いりますか?」
源二郎の問いに、三成は瞬間、何を問われたのか分からずに、呆けた顔で源二郎を見つめていたが、じわじわと、ああきっと彼は己に水のおかわりがいるのか訊いているのだな、と理解をして、慌てて立ち上がった。
「いらん!俺は寝るぞ!」
「はい。ではお休みなさい。」
流しに向かう為に踵を返した源二郎の背を見つめていた三成だったが、ええい己は何をしているのだ!と心の中で叱責し、夜中であるにも関わらず、どすどすという足音を響かせながら、ベッドを目指して歩き始めた。明日の朝、必ず源二郎に礼を言う、言うぞ、と決意を固めたが、果たしてそれは成功するかどうか。三成は己の素直になれない性格を、ちゃんと分かっていたからだ。
***
かっゆー‥、
PR