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大坂の陣メンバー×秀次事件

元から妄想です、捏造です。
時代考証などしないよ、史実なんて知らないよ。
という精神のもと書いてます。

要は、そこに夢があるか否かです。










「そう言えば、長門守殿は
重茲殿のご子息だったのですね。つい先日知りました。」

 軍議も終わり、皆が様々に退出しようと腰を上げた時だった。真田幸村は何気ない様子で、斜め向かいに座している若武者に声をかけた。木村重成は、ええ、と短く相槌を打っただけだった。幼少期に父を亡くしており、あまり父の思い出がなかったのだ。
 既に秀頼は退室していたが、珍しく淀の方は大野治長と話し込んでいたが、真田から彼の人の名が飛び出すなり、その視線を真田に向けた。真田は気付いていながらそれには触れず、ぐるりと場を見渡した。苦虫を十も二十も噛み潰したような表情の後藤又兵衛と眼が合い、真田は半ば条件反射で笑みを返した。更に眉間に皺が寄ったことを確認して、再び真田は木村に顔を向けた。

「つねづね疑問に思っていたことなのですが、あなたのお父上は何ゆえ腹を召したのですか?いえ違うのです、そうではない、そうではないのです。あなたのお父上は主人に殉じただけなのでしょう。ならば、あなたのお父上のご主君は、何ゆえ死罪となったのでしょうや?」

 にっこりと笑みを付け加えれば、木村は戸惑うように眼をそらした。こうなると、後藤が立ち上がって間に入り、あまり長門守をからかうなよ、と制止をかける。今も億劫そうに立ち上がって、二人の間に割って入り、

「お前は一々不穏なんだよ。」

 と、真田の言をたしなめる。彼は心底木村に甘いのだ。又兵衛自身は、
木村重茲という名を今初めて聞いたであろうに。
 心残りをそのままにしておきたくないんです、と言い繕いながら、真田はさっと視線を移した。まだこの場に居る、蒼ざめた顔をさらしている淀の方とそれを宥めている大野治長を横目に見やれば、今度は毛利勝永と眼が合った。その眼は全く観客のそれで、皆の様子を楽しげに眺めているようだった。微笑まれたので真田も同様に返し、その笑みのまま木村に顔を振った。

「お父上のことですから、当然お詳しいのでしょう?」
「い、いいえ。わたしも詳しいことは知らないのです。ただ、父は忠義を尽くされました。それだけで、わたしはいいのです。」
「これは長門守殿らしくはありません。事の仔細を知らぬのですか?」
「知りませんし、知りたいとも思いません。既に過ぎたことでございますれば。わたしにとって父とは、忠義の形そのものなのです。それ以上は、いりません。」

 ふふふ、と唐突に真田が声を立てて笑った。後藤は眉間の皺を深くし、木村はよっぽど驚いたのか、その肩をびくりと震わせた。

「これはあまりにむごい、むごいことをなさったものです。殺生関白様が何ゆえ死罪となったのか、誰も教えてくださらなかったのですか?お父上の死に直接関わりあることなのに?」

 真田の空気に飲まれたのか、え、ええ、と木村は小さく頷くだけだった。見兼ねた後藤が口を開く。

「おい、いくら謀反人とは言え、太閤殿下の縁者だぞ。無礼が過ぎる。それに、秀次公が死罪となった理由は、太閤殿下に謀反なさろうとしていたと公表されている。もとから挙動がおかしかったと噂になる程だ。理由はそれで十分だろう。」

「そう、それです。ですが、どこに証拠があるのです?そのおかしな噂というのは、関白様が誰それを斬っただの殺しただの、少々イカれた性交渉を行ったのだとかいう類でしょう?それならば、それは在り得ぬ話なのです。いえ、特殊な性癖については真偽は分かりませんが、人斬り如何は知っておりますよ。ええ、ええ、彼の御仁には不可能なのです。だって、死体が上がったその晩、わたしは関白様と一緒に居ましたから。」

 ぱちぱちとまばたきをする木村、反対に眼を見開いて驚いている後藤。真田は満足そうに二人の様子を眺め、先程から視線がうるさい毛利を振り返った。

「秀次様と?一晩?一緒に?いえいえ、ただ、何をなさっていたのだろうなあと思いましてね。二十も昔のことでしょう?お二人ともお若い。若さとはおそろしいものですよ。平然と愚かなこともしてのけますからねぇ。」

 毛利はこちらに歩み寄りながら、いかにも面白いものを見つけたと言わんばかりの様子で、そう訊ねた。そうは思いませんか?と後藤の顔を覗き込んだが、彼は顰めっ面を更に険しくさせただけで、返答はなかった。ただ、それは二人が予想していた通りの返事だったので、笑みを崩すことはなかった。間に挟まれた木村が、困ったように三人の表情を交互に見つめている。

「何って。若い男が二人揃って、やることと言ったら一つでしょう。何を想像なさっているのかは知りませんが、ただの酒盛りですよ、お酒。」

 なーんだ、つまらない。という声が聞こえたわけではないが、毛利の表情はまさにそれであった。

 尚も一言二言、毛利と他愛ない言葉を掛け合っていたが、真田の言に我慢ができなくなったのか、大野治長がさっさと退室するよう促してきた。真田はちらりと大野の表情を伺い、その後ろで縮こまっている淀の方を見た。気の毒な程、顔色を悪くした彼女は、今にも倒れてしまいそうだった。
 真田はその姿を見やりつつ、ええそうですね、そうします、と大野にいつもの笑みを向けた。攻勢になりきれない大野は、分かればよい、と顔を引き攣らせている。

「では、戯言を申しました。長門殿、今の言はお忘れください。あなたの言う通り、既に過去のことでございますれば。」

 そう言って真田は立ち上がった。それに続いたのは毛利だ。取り残された後藤と木村は、狐に化かされたような心持ちでその後ろ姿を眺めるのだった。



---------------



「佐殿、あなたも思いきったことをなさったものです。」

「叩けば何かしらの埃が出るとは思ってはいましたけど、まさかああまで露骨だと、むしろ笑い話ですね。埃が落ち切るのは一体いつになることやら。」

「佐殿は、秀次様のことがお好きだったのですね。」

 毛利の言である。真田は足を止めて、考える素振りをする。毛利も真田の答えが聞きたいのか、同様に立ち止まって真田の表情を眺めている。

「さぁ、どうでしょう?ただ、あの方は珍しいお酒をたくさん持ってみえましたから、そういうところは好きでしたよ。」




***
混ぜるな危険(…)

ちなみに、重成殿の父上に関しては諸説あるそうで、一概に息子!とは言えないのであります。

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