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妄想戦国です。

パッと見、盛親×幸村っぽいですが、妄想戦国でCPを書くつもりは全くないので、
まあ錯覚です。

盛親どのを模索中なので、色んなことに手を出してみようと思います。

なにごとも挑戦です。(…)

あっ、タイトルはアリプロの『欲望』からワンフレーズ拝借しました。






「左衛門佐どの。」

 と、声をかけられ、真田はほんの一瞬だけ逡巡して、足を止めた。丁度通りかかった部屋の中を覗き込めば、長宗我部盛親がこちらに背を向けてあぐらをかいていた。真田を呼び止めたのは、かの人の声である。真田は耳がよかったので、人の声を聞き間違えることは滅多になかった。

「呼びましたか?宮内少輔どの。」

 真田はそう言って、部屋へと足を踏み入れた。盛親は相変わらずこちらに背を向けている。相手が盛親ではなかったら、真田は無視をして通り過ぎていたことだろう。盛親が誰かに己から声をかけるのは、至極珍しいことであったからだ。元々、あまり口達者ではないようだ。世話を焼きたがる面々がわいわいと話しかける光景はよく見られるが、その逆はまったくもって稀だった。だから真田も気まぐれに彼の呼びかけに応えたのだ。

「女のにおいがする。」

 そう言いながら、盛親はようやく振り返った。それは真田がようやく見慣れてきた、どこか茫洋とした表情ではなかった。少なくとも、真田にとって初めて出会う彼の顔だった。何とはなく、嫌な予感はあったのだろう。いつもの笑みを浮かべながらも、その内心には不快の念がじわりと染み出ていた。無意識に警戒しているようで、真田は必要以上に盛親に近寄らなかった。あぐらをかいている盛親を見下ろすように、真田は立ったまま僅かに着物の裾を持ち上げ、においを嗅ぐ仕草をした。

「先程まで、淀の方様に呼ばれていましたから。この城の奥は、本当に姦しくていけません。女性が後から後から沸いてくるようです。おかげですっかり囲まれました。においはその時に移ってしまったんでしょう。」

「抱いたのですか。」

 抑揚の少ない、盛親の声だった。あまり下世話なことを言わぬ男であったし、話を振られてもすぐに飽きてしまう性質らしく、そういった話題とはどこかかけ離れていた印象があった。だからこそ余計に、唐突に彼の口から出た言葉の理解が遅れてしまった。真田は心の中で舌打ちをして、あからさまに顔を顰めた。そもそも、真田はこの城に住む女に興味を抱いたことがない。表面ばかりを取り繕う煌びやかな女よりも、百姓女の方が好きだった。白粉のにおいよりも土と汗のにおいが、ほっそりとした腰元よりも、肉付きのよい丸々とした女が好きなのだ。

「まさか、どうして。あんな性格の悪い女共など、こちらから願い下げです。」

「女はそもそも、性格の悪いものでしょう。」

 それもそうか、と、真田は思い至る。元々真田は、女があまり好きではないのだ。あれはきっと、別の世界の生き物なのだ。

「そうであっても、わたしは身分のある女と同衾したいとは思いません。趣味が悪いのです。こればっかりは父の遺伝でしょう。兄も結構な悪食でしたから。」

 そう下品なことを口走りつつ、何故こんな流れになってしまったのか、と一人思案する。こういった話題は嫌いなのだ。まったくもって、趣味が悪い。

「身分のある女の方が良いかおりがします。俺は、女の白粉と香と体臭が交じり合ったにおいが好きです。左衛門佐殿、」

 嫌だな、と真田は思わず呟いた。盛親の眸に宿る光は、甚だ不穏だった。これは獣のそれだ。飢えた野性の獣のそれだ。真田はさっと視線をそらす。決して恐れたわけではなかった。面倒事が嫌いなのだ。
 けれども、目を離したのがまずかった。どうやったのか、真田は足払いをかけられた。全くの不意打ちである。受け身もとれずに、強かに背中を畳に打ち付け、呼吸も困難となった。更に追い討ちをかけるように、盛親が真田の上に覆いかぶさった。背丈が六尺もある盛親である。小柄な真田では抗うこともできず、容易く動きを封じられてしまった。

「宮内少輔どの、わたしは、女ではありませんよ、」

「ええ、存じております。」

 そう言いながらも、真田の着物の合わせ目に顔を寄せて、においを吸い込んでいる。いや、この着物についている、女のにおいを、だ。

「どいてください。人を呼びますよ。宮内少輔どの、今ならまだ、冗談で済ませて差し上げま、」

 びくり、と真田は身体を痙攣させた。盛親の歯が真田の喉に食らいついたからだ。痛い、と言うにも苦痛が走り、真田は身体を強張らせた。血が滲んでいるかもしれない。盛親の力に加減はなかった。彼の舌が喉の辺りを行き来する度に、ぴりりとした痛みが走った。

「やかましい。」

 それはあまりに一方的な物言いであった。どこかぼんやりとしているように映る盛親だが、女の扱いともなると変貌するのかもしれない。手つきは決して優しくはない。むしろ乱暴で凶暴で独りよがりだ。抵抗を力でねじ伏せて、自侭に振る舞っている。なんて男だ。真田は思う。この男が、この世の主となる場所は、閨の中しかないのだ。あわれだとは思わなかった。むしろ滑稽ですらあった。長宗我部の御当主がなんとも情けないことだ。
 真田は嘲笑した。それが盛親の何を刺激したのか、真田には分からない。まるで真田をからかうように、もしくは、何かと錯覚しているのか、顔を下へ移動させて合わせ目を肌蹴させ、圧し掛かっている片方の膝で裾を割った。カッとなるのは当然だった。これ以上の侮辱に耐えられる程、真田左衛門佐はこの男に心を許してはいなかった。

「どきなさい。どけっ」

 そう半ば叫ぶように言って、真田は膝を折って、思い切り膝を突き立てた。真田としては股間を狙ったつもりだったが、残念ながら脇腹を捉えただけだった。それでも衝撃は大きいはずだ。女の最後の抵抗とは訳が違う。言葉通り、盛親はその場から飛び退いた。真田も素早く身体を起こし、ひりひりと痛む喉元に手をやった。もちろん、盛親を睨みつけることも忘れていない。


「おいおい、お前らなにやってんだよ。どったんばったん、うるせぇったらねぇよ。」

 後藤又兵衛であった。生来の世話焼きは、部屋の中の人物を一瞥するなり、分かりやすく顔を顰めた。正確には、真田を確認して、だろうか。

「苦言は宮内少輔どのへどうぞ。わたしは被害者です。ええ、ええ、わたしが初心な生娘だったら、あなた、どうするおつもりだったんですか?」

 後半は盛親への言葉だ。けれども、盛親の横顔は既にいつもの茫洋とした、ぼんやりとしたそれだ。のそりとした動きで、盛親は冒頭と同じようにあぐらをかいた。ふん、と鼻を鳴らしながら、真田はようやく乱れた合わせ目を整えた。不愉快であった。後藤は険しい顔で真田の行動を眺めていたが、何やら合点したのか、

「盛親は怖いもの知らずだな。更に言うなら趣味が悪い。」

 と、のたまった。真田がじろりと睨みつける。後藤は首をすくめて降参の振りをした。思わずため息をついて、後藤の横をすり抜ける。この部屋にこれ以上長居するのは御免だった。

「おいあんた、」

 後藤がすん、と鼻を鳴らす。嫌な男だな、と真田は思った。においを嗅ぐその仕草は、獣じみて見えた。

「女のにおいがするな。」

 それは今この瞬間の真田には、まさに禁句だった。間が悪いどころの話ではない。真田はいつものひやりとした笑みを浮かべて、

「においなどと仰って、あなた、犬畜生みたいですね。」

 そう吐き捨てた。とりあえず、真田丸に戻ったら、水浴びをしよう。大野修理に呼ばれたとしても知るものか。秀頼君が話があると?そんなもの、こちらの知ったことではない。淀の方、あああの方の取り次はしばらく無視しよう、そうしよう、そうしなければ、この腹の虫はおさまらぬ!腹を立てたせいで血行が良くなってしまったのか、先程よりも更にひりひりと痛む喉を押さえながら、あの二人の報復をどうしてやろうかと企む真田であった。






***
ギャグのつもりはなかったんですが、蓋を開けてみると、とんだギャグでした。
これは酷い。
大坂五人衆=みんなそれぞれに性格が悪い。
みんなちがって、みんないい。 になるわけはなかった。


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