× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 色々願望を入れました。原作でも、もっと宇髄さんと伊黒さん、お話ししてもいいと思うの。距離感が分からん。なので、これくらい同僚感があったらいいのにな~と思いました。仲が良いと私が嬉しい。 二人が駆けつけた時には、全てが終わった後だった。建物は大きく崩壊し、瓦礫の山を築いている。戦闘の激しさを物語っていた。柱の強さは、義勇もよく知っている。その柱の中でも長くその地位を守ってきた宇髄の負傷に、義勇だけでなく伊黒も衝撃を受けたようだった。二人とも、見た目には全く変わらなかったが。 伊黒は宇髄から状況を聞きながらも、得意の皮肉は相変わらずだった。ここで下手に労わるのもそれはそれで伊黒らしくないし気持ち悪いだろうなあ、と半ば失礼なことを思いながら、義勇は後の三人へと視線を向けた。伊之助は全力を出し切ったとでも言いたげに、高いびきをかいて大の字になって眠っている。その傍らには両足を骨折した善逸が、足を投げ出した体勢で座っている。その姿勢しか出来ない、というのが本音だろうが。一番の問題は炭治郎だ。そこかしこの裂傷の、一つ一つが深い。既に呼吸で止血は済ませているようだが、あくまで止めてあるだけであって、傷が塞がっているわけではないから、当然ひどく痛む。流れた血も元に戻るわけではないので、明らかに貧血の症状が出ている。それでも、同期の二人を気遣いながら、義勇達へも視線を向けている。正直言って、お前はさっさと寝ろ、以外の言葉が出てこなかった。 「おい、なんで炭治郎は、さっきからこっちをちらちら見てるだけなんだ?気になるなら、来りゃあいいじゃねぇか。」 「多分、錆兎の命令を守っているからだろう。」 「分かるように説明しろ。」 「・・・錆兎が、俺と接近禁止にしたらしい。」 「はぁ?んな面倒なことになってんのか、お前ら。錆兎にしては珍しく地味だなぁオイ。ま、いいや。」 普通に会話をしているが、宇髄は重傷である。片目は潰れているし、片腕を失っている。失血の量は炭治郎の比ではないだろうに、けろりとしている。いや、痛い痛いとは言っているが。ただ、その調子が、精々少し怪我をしてしまった程度の軽いものなのだ。 「おい炭治郎!ちょっと来い!錆兎が言い付けたことは、ここでは無しだ!」 こんな場面でも錆兎の命令を守ろうとしているのは、炭治郎が炭治郎である所以だろう。宇髄の許しに炭治郎は目に見えて表情を輝かせ、ゆっくりとした足取りではあるものの、自分の足で義勇達へと駆け寄って来た。しかし、やはり身体はとうに限界を迎えていたようで、足元からぐらりと崩れ落ちる。咄嗟に義勇が手を伸ばし、倒れないように抱えながら、ゆっくりと腰を下ろす。義勇も一緒にその場に座り込んだが、炭治郎はめまいを起しているようで、ぐらぐらと頭が揺れている。義勇は傷口に触れないように頭に手を添え、ぐいと横たえさせた。既に力の入らない炭治郎は、義勇のされるがままだ。地べたよりはマシだろうと、義勇は己の硬いと自覚のある太ももに、炭治郎の頭を半ば強引に乗せた。急に天地がひっくり返ったように思えたのだろう、炭治郎はただただ驚いて義勇を見上げている。 「あの・・・?」 「お前は、とりあえず寝ろ。後のことは宇髄がなんとかするから気にするな。」 オイオイと宇髄から野次が飛んだが、義勇は慣れているので、宇髄を一瞥するに留めた。元からある身長差だが、自分が座っているせいで、見上げるだけで首を痛めそうな高さだった。 「いえ、あの、でも、これはちょっと、流石に、錆兎に、申し訳ないので、」 ようやく己の体勢に気付いた炭治郎が、しどろもどろにそう言ったが、義勇は、錆兎は気にしない、と一人的外れなことを告げた。いやいや、気にするって、滅茶苦茶気にするぞ、錆兎は、と言いはしなかったが、宇髄と伊黒の心は通じ合っていた。中々寝ようとしない炭治郎に義勇も少し意地になり、いつもの癖でぽんぽんと炭治郎の胸を軽くたたいた。口外する機会がないだけで秘密でもなんでもないのだが、時々錆兎にしてやっていることだ。錆兎は睡眠時間が元々短い性質で、柱の激務をこなす割に、休息時間が異様に短い。燃費が良いのだろうが、時に気分が高揚して体温が高くなり過ぎることがある。錆兎の自己申告では、そういう時の方が調子が良いらしいのだが、義勇にとっては異常の一言で、とりあえず寝てくれ、と強引に眠らせている。火照った身体に、体温の低い義勇の手の温度が気持ちが良いのか、錆兎も最後は気を緩めて夢の世界へと旅立つ。それと同じ手つきで、炭治郎を宥めているだけだ。義勇に自覚はなかったが、まるでぐずる子どもをあやすように一定の拍子を刻む動きに、強張っていた炭治郎も次第に力を抜いていく。炭治郎は、母の幻を視た。下の兄弟達が多かった炭治郎は、早々に母の温もりから卒業しなければいけなかったから、随分と懐かしく感じられた。ついつい気も緩み、無意識に深く鼻で息を吸い込む。ひどく薄いけれど、既に知っている匂いだ。それに混じり物があることに気付いて、ついぼんやりとした意識のまま、それを口にしていた。 「冨岡さんから、別の人の匂いがします。」 「・・・伊黒から上着を拝借している。それだろう。」 その言葉に食いついたのは宇髄だ。先程ねちねちと伊黒にやられた仕返しとでも言わんばかりに、 「へぇ、伊黒が上着をねぇ。なんで冨岡は上着借りなきゃなんなくなったんだろうなあ。教えてほしいなあ、伊黒さんよォ。」 「冨岡の上着が死んだ。それだけだ。」 「へぇへぇ、何をしていたらそうなるんだろうなあ。甘露寺相手でもあるまいし、お前冨岡にそんなに親切だったっけ?」 「、鬼ですか?怪我をしたのでは、」 「鬼ではない。あと、上着の釦は全滅だが、俺は無傷だ。」 じゃあ、よかったです、と炭治郎はようやっと目蓋を閉じた。すぐに安らかな寝息が聞こえてきた。義勇も、ようやく寝たか、と息を吐く。血で不格好に固まってしまっている髪をほどいていると、宇髄の大きなため息が降って来た。なんだ、と言う代わりに見上げれば、宇髄は心底呆れた顔で義勇を見下ろしていた。 「お前さあ、もうちょいそういう顔見せれば、男だって勘違いされることもなかったんじゃね?」 「言うな、錆兎がうるさくなるだけだ。」 「まあ、確かに。」 義勇を置いてけぼりにしての会話は割といつものことなので、義勇は彼らの輪に入ることを放棄した。頭上では、宇髄と伊黒の会話が続いている。 「ていうか、釦全滅ってなに?お前らマジでそういう関係なの?でもってお前、案外がっついちゃう系なわけ?俺が必死こいて戦ってる間に、そういうイケナイことしてたの?」 「宇髄、残った目玉が大事なら、気色の悪い邪推は慎むことだな。」 「へいへい。ちょっとした冗談だろ。で、マジで、何があったんだよ。」 「色々あって冨岡の隊服とシャツの釦が弾け飛んだ。胸をさらしている痴女の連れだと思われたくないからな、やむを得ず、本当にやむを得ず、最大限に譲歩してやったまでだ。」 「いや、まず釦が弾け飛んだ状況が謎すぎるだろ。肝心なのそこじゃねぇの?」 「黙秘する。聞きたければ、要領を得ない冨岡から聞け。」 また痴女だのなんだのと言われている、と義勇は少しばかり肩を落とした。己の苦情が錆兎に向かうことを知っている義勇は、ひどく申し訳ない気持ちになって、ついついその想いが口からこぼれ出ていた。 「つぅわけだが、冨岡、何があったわけ?」 「俺は痴女じゃない。」 何故だか伊黒から、「お前は人の話を聞く気があるのか?ないのか、ないのだろう。そこらの子どもの方が、まともに受け答え出来るぞ。おい、聞いているのか冨岡?」と小言をぶつけられて、義勇は口を固く結んだのだった。 PR |
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