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ようやく錆義らしくなってきた気がする。
でも、ここからまだもうちょっと色々ある予定です。








 柱合会議が終わり、折角なので外食をして、二人は水柱邸へと帰った。錆兎も義勇も、明日からはまた任務の日々だ。遠方ではないので昼までのんびりする時間はあるが、そういった時間はもっぱら睡眠時間に充てられる為、水柱邸の消灯時間は早い。今日も早めに風呂に入ったが、寝る準備が出来たところで、錆兎が義勇に声を掛けた。ようやく月が出てきた時分だ、夜はまだまだ長い。
「義勇、少し話そう。」
 錆兎の提案に、義勇も頷く。これは別段珍しいことではなく、昔から時間があれば、真菰も共に他愛ないお喋りをしていた。階級の上がった今では三人揃うことの方が稀で、ここしばらくはそのようなことは出来なかったが。義勇は錆兎と共有するこの時間が好きだ。錆兎は決して義勇の言葉を急かさない。会話の途中で言葉が迷子になってしまう義勇を、根気強く待ってくれる。柔らかな菫色は、まるで包み込まれているようにあたたかくて、義勇は言葉を探すことを忘れて見入ってしまうこともある程だ。その度に、少し照れた様子で「見過ぎ。」と義勇を小突く錆兎の優しい声も好きだ。錆兎と過ごす、まるでまどろみの中にいるような、ゆったりとした時間が大好きだ。

 茶の準備をしてきた義勇が、錆兎の前に湯呑みを置く。一口含めば、苦味と甘味が口の中に広がった。やはり義勇に淹れてもらったお茶の方がおいしい。
「義勇、皆に散々言われたと思うが、今日の着物はよく似合っていた。」
「もう錆兎には褒めてもらったと思うが?」
「言葉が足りなかったなあと思って。簪も、自分には可愛過ぎると言ってたけど、そんなことなかったぞ。全部、よく似合ってたよ。」
 義勇は錆兎の言葉にふくふくと笑って、錆兎と真菰に褒めてもらうのが、一番うれしい、と目許を綻ばせていた。気分が良くなったところを見計らったわけではないが、これから訊くことは義勇の耳には少し痛いかもしれない。
「炭治郎の妹、お前に懐いていたな。」
「たまたまだ。兄からして、俺と違って人との距離が近い。そういう兄妹なのだろう。」
「義勇が初めて会った時も、あんなに人懐っこかったのか?」
「いや、鬼になったばかりだったからな、むしろ攻撃された。」
「それでも、助けたのは何故だ。」
 錆兎が、すっと話の核心を突く。義勇は錆兎を見、手に持っている湯呑みの中を覗き込み、再び錆兎へと視線を戻した。相変わらず、綺麗な眸だ。どこまでもどこまでも澄んでいる。底のない水面に、錆兎はとっくにとらわれている。義勇の水面は、心の内に飼っている感情の葛藤を感じさせない。複雑な義勇の懊悩を隠し、ただひたすらに凪いでいる。彼女がそうしなければ、と装っている。その努力を、錆兎は悲しいなと思うけれど、否定することはしない、出来やしない。
「竈門を先に昏倒させたから、兄を守ろうとしたのだろう。喰うことなく、背に庇っていた。」
「それだけ、か?」
「それだけだ。理由としては弱いな。」
 あの時の俺は、どうしてこんな些細なものを信じようとしたのだろうな、と、義勇は顔を伏せてしまった。錆兎も何度か任務で、鬼になる瞬間に居合わせてしまってことがある。鬼になったばかりはとにかく飢餓状態が酷いらしく、誰彼かまわず襲い掛かる。それなのに、喰わずに背に庇うというのは、確かに異例ではある。だが、それだけだ。もし義勇ではなく錆兎が彼らに先に出会っていたとしても、助けることはなかっただろう。鬼は、鬼だ。それなのに義勇は、たったそれだけのことに、何かの光を見出した。彼女は否定するだろうが、これはとても勇気のいることだ。
「義勇、」
 そっと錆兎を見上げる義勇に、錆兎は少し乱暴に頭を撫でた。
「そんな顔をするな。結果、お前の勘は正しかった。お前の眸は、正しいものを見つけられるんだ。これはすごいことだ。なあ義勇、お前があの兄妹を救ったことで、今の鬼殺隊に新しい風が吹いてる気がする。これは、お前の手柄だ。」
「宇髄も似たようなことを言っていたが、」
「うん。」
「それは、竈門と禰豆子の努力だ。俺は、何もしていない。」
「義勇、柱合会議の時、炭治郎が泣いていたのを知ってるか?お前が腹を切ると聞いて、あいつは泣いてたぞ。俺はな、あの涙は、義勇、お前の優しさに触れたからだと思う。炭治郎は、ちゃんとお前の繊細さを分かってるよ。もっと、自分を誇ってやれ。」
 な?と顔を覗き込むと、義勇の、時に鏡面のように感じられる眸に、少しの波紋が広がった。こうやってゆっくりと、義勇の心を溶かしていきたい。急ぐ必要はないのだ。
「錆兎は格好いいなあ。」
「お前なあ、ここで言うことか?」
「いつもそう思ってるけど、特にそう思ったから。口にして発散しないと、俺の心がはぜてしまう。」
 このまま義勇の調子に合わせてやるのも、それはそれで幸せな錆兎なのだが、まあそれは置いといてだな、と告げた表情に、義勇もさっと笑みを固まらせる。
「よくも俺に黙っていてくれたな!俺がどう思うか、お前なら分かっただろうに!」
「・・・錆兎を巻き込みたくなかった。」
「別に、全部俺に話せとか、秘密を作るなとは言わない。だが、お前の命が関わっていることに俺が仲間外れにされて、平静でいられるわけないだろう。」
「・・・そうだな、仲間外れは、かなしい。」
 分かったならいいよ、もう済んだことだしな、と笑いかければ、義勇もぎこちなく笑みを見せた。義勇は錆兎や真菰、鱗滝先生には色々な表情を見せるが、柱をはじめ他の者は、彼女がこんなにも繊細で鮮やかな表情を持っていることは知らないだろう。それに優越感を抱いている錆兎だが、そういうところも独占欲の塊って感じだよなぁ、とぼやく宇髄の声が聞こえなくもない。今のところは無視をしているが。
「ついでに聞くが、あの短刀はなんだ。最終選別で折れた刀は、処分してもらったと言っていなかったか?」
 う、と義勇が言葉を詰まらせる。これは言葉を探しているのではなく、言いにくいことに触れたからだ。別に怒っていないから教えてくれ、とじっと眸を見つめると、義勇もおずおずとそれを口にした。
「隊服の採寸をしてもらっている時に、捨てるかどうか聞かれたんだ。でも、ずっと錆兎を守ってくれた刀だから、捨てるのも忍びなくて、鋼鐵塚さんに短刀に研ぎ直してもらった。物凄く怒られたけど。先生と真菰にも、折れた刀だから縁起が悪いって言われたよ。でもやっぱり、錆兎の刀を捨てることなんで出来ない。」
 もう俺のお守りだから、錆兎には返してやらないぞ、と言い、今も懐にあるのだろう、胸元にそっと手を置いている。先生はいいとして、真菰まで知っていたのか。案外自分だけ外されていることが他にもあるのでは、という気になってしまい、男らしくはない!と思いつつも、つい口に出してしまった。
「真菰が共犯だってことは分かったが、他に俺に黙っていることはないよな?真菰は知っていて、俺は知らないっていうの、結構傷付くからな。」
 義勇は考える素振りをして、多分、ない、と思う、と弱々しく呟いた。嘘をついているのではなく、思い当たる節がない、という表情だ。この場合、本当に義勇が忘れていることもある為、これ以上の詮索は難しい。

 気になることをあれこれ訊ねてしまったが、大事なことを忘れていた。胡蝶から圧迫痕に効く塗り薬を手渡されていたのだった。今も錆兎の目を気にしてだろう、手首には包帯が巻かれている。
「義勇。薬を塗りたいから、手首を見せてくれ。」
 一瞬躊躇う素振りを見せたものの、義勇は大人しく包帯を外し、錆兎の前に腕を差し出した。湯で温められたせいだろう、昼に見た時よりもくっきりと痕が見えて、名も知らぬ男に対し、ふつふつと怒りが沸いてきた。好いた相手に乱暴するなど、男の風上にも置けぬ。
「結構強く痕が残っているが、本当に痛くないんだな?強がりではなく?」
 薬を塗り込みながら、少し押してみたり、軽く揉んでみたりしたが、義勇の表情に変化はない。良くはないが、痛みがないのは幸いだ。
「あまり何度も蒸し返したくはないが、今までも、大事になるようなことはなかったんだよな?泣き寝入りとかしてないよな?俺に言いにくければ、真菰でもいい。本当に今まで、」
「錆兎。」
 手首を摩っていたはずが、いつの間にか指を絡めていたようだ。鍛錬で出来た肉刺のでこぼこはお互い様だが、それでも女性らしいほっそりとした指だ。刀を扱う者として、爪の手入れは欠かしていない。桜貝のような丸く整えられた爪と、細く長い指、そこにある不釣り合いな肉刺が、なんとも義勇らしい。
 義勇はぎゅっと錆兎の手を握り、錆兎の言葉を止めた。義勇の眸に動揺はない。これ以上ない答えに、よかった、と錆兎もほっと胸を撫で下ろす。
「錆兎が心配するようなことは何もない。錆兎以外に触れられても、不愉快なだけだ。ちゃんと拒絶する、むしろ、過剰に拒絶し過ぎてしまう。」
 錆兎と触れるのは、こんなに心地良いのになあ。半ば独り言のような呟きだった。抱き締めてやりたい衝動と、むにむにと錆兎の掌を揉んでいるのが可愛いから、そのままにしておきたい衝動とがぶつかり合っている。そんな錆兎をよそに、義勇は言葉を続ける。
「・・・宇髄が恋文と揶揄した手紙も、送り返す。あれは俺には過ぎた言葉だ。誰かと間違えているに違いない。」
 錆兎としては、願ったり叶ったりなのだが、それはそれで相手が可哀想だな、と思わなくもない。まあ、止めはしないが。
「告白をされたのは初めてのことだったから、自分でも分からない部分が動揺していたと思う。まだまだ修行が足りない。」
「は?」
「え?」
 思わず発してしまった声に、義勇もなんだ?と声をかぶせる。
「初めて、だったのか?」
「初めてだよ。」
 まるで当然だ、とでも言いたげな様子に、錆兎は頭を抱えればいいのか、自分の牽制が思った以上にうまくっていてよかったと喜ぶべきなのか分からなかった。昔から錆兎が義勇の横にいるせいで、妙な輩は追い払うことが出来ていたのだが、現在は錆兎も柱となった。柱の錆兎が横にいるせいで、義勇に想いを告げるような勇者はいないようだ。義勇に好意を抱いている者がいることは知っているが。錆兎がざっと思い浮かべるだけでも、何人かは真剣に義勇に惚れている者がいる。流石義勇を見初めるだけあって、礼儀正しく真面目な奴ばかりなので、錆兎も好きなようにさせている。遠くで眺めているだけで十分といった様子で、義勇自身が認識していない面々ばかりだから、と言っては少しばかりひどい言い草だろうか。
「錆兎がたくさん告白されてるのは知ってるけど、俺はこんなんだし。」
 まあ、その手紙をくれた人も勘違いだろうから、初めてと言うのも違うか、と一人納得している。今日の義勇は爆弾をたくさん落として行く。義勇に見つからないようにしていたつもりなのだが、やはりそこは女性と言おうか、勘が鋭い。そこで悋気でも、ちょっとした我儘でも起こしてくれれば錆兎も手応えを感じるところなのだが、「俺の錆兎がみんなにモテててすごい。」以外の何ものでもない以上、錆兎はこの話題は今後も出すまいと誓った。

 ついつい軽口が嵩んでしまったが、このまま穏やかに場をお開きにすることは出来なかった。義勇には不意打ちのような形になってしまったことが申し訳なく感じたが、この話を放置しておくことは出来ないのだ。彼女の為にも、錆兎の立場的にも、もちろん、鬼殺隊にとっても。
「義勇、柱任命のことだが、お前はどう思う?本当に受ける気はないのか?」
「俺は相応しくない。俺は柱のように、強い人間ではない。そもそも、最終選別で鬼の一体も倒せず、錆兎のおこぼれでこうして生きているだけだ。」
「おこぼれとか言うなよ。だがな、義勇。最終選別の最終日、あの時義勇が駆けつけてくれなければ、俺は死んでいたぞ。」
「でも、俺のせいで、あの鬼を斬ることが出来なかった。錆兎に、俺を選ばせてしまった。」
 義勇はずっと後悔している。姉を殺されたあの日、最終選別のあの日、鬼を憎む以上に己を恨んでいる。後悔は尽きることはない。錆兎とてそうだ。父を失ったあの日から鬼殺隊として生きる今日まで、後悔しない日などいない。錆兎はその感情を外に向けられるが、義勇は違う。ゆっくりゆっくりと己の中にしこりが溜まって行く。何よりも誰よりも自分が悪いのだと思うことで、心の平静を保っている。
「義勇、」
 そっと手を引いて、腕の中に閉じ込める。随分と差がついてしまった。まだ隊士になりたてだった頃はほとんど差の無かった二人だが、やはり性差はいかんともしがたい。今でも義勇は錆兎と同じ型の隊服を着ているが、そもそもの理由は、自分が死んでしまった時に、自分の隊服を錆兎の予備として使ってもらえるだろうから、というなんとも後ろ向きなものだった。それを聞いた時は流石に叱り飛ばしたが、義勇の根底にあるのは贖罪だ。誰かの為の命になりたい、少しでも誰かの何かになりたい。
「俺はお前の、繊細で優しい心を誇りに思う。だから、今じゃなくていい、いつか、自分の心を許してやれ。俺がどれだけ言っても駄目なんだ、お前がお前自身を許してやらなければ、」
「未熟で、ごめん。」
「義勇、そういうのは、未熟ではない。お前は強いよ。だから柱にと推されたんだ。あまり言いたくはないが、杏寿郎がお前に求婚しているのも、お前が強いからだ。」
 胡坐を掻いた膝の上に義勇を下ろす。錆兎の鼻先には義勇の顔があったが、伏せてしまっていて目が合うことはなかった。睫毛の影が、よくよく見えた。ぽんぽんと義勇の背を叩けば、義勇は少し背を丸めて、錆兎の胸に耳を寄せた。人の心音を聞くのは心地が良い。特に、自分達のような仕事をしている人間にとっては、心臓の動く音は、そのまま生きていることの証だ。
「身体を鍛えて技を磨けば、心も強くなると思っていた。だが、実際はそうじゃなかった。俺は結局、何も変わっていない。」
「義勇、あまり自分を卑下するな。お前はよくやっているよ。俺の言葉が信用ならないか?」
 義勇は逡巡の後、おずおずと錆兎を見上げた。きれいなきれいな、宝石のような瞳だ。錆兎の宝もの。
「錆兎はいつも俺が欲しい言葉を言ってしまう。嬉しいけど、あまりに甘えてしまうから、ちょっと、こわい。」
 こんなにも好きなのに、こんなにもたくさんのものをくれているのに、俺は欲張りだ。
「いいよ、義勇なら。義勇だから、いいんだ。俺がこうしてお前を甘やかすのを、お前が許してくれ。」
「だから錆兎は、ずるい。」
 完全に眸を閉じてしまった。しばらくそうしてじっとしていたが、自分の中で感情の収拾がついたのだろう、ごそごそと身じろぎをして、錆兎の膝の上から離れた。確かに、会話をするには近過ぎていた。まだ寒い時期ではなかったが、先程まであった温もりがなくなってしまったせいで、通り過ぎて行った風が少しばかり冷たく感じた。

「柱の件は俺から断っておくよ。」
 人にはそれぞれ、得手不得手がある。それを自覚した上で、果たさなければいけない役割がある。上に立つ者には素質がいるし、優秀ではあるのに、周りを率いることは壊滅的に駄目な人間もいる。ただ、その素質も、別段特別なものではないと錆兎は思っている。持って生まれた天性の才も必要だが、境遇だとか経験だとか、そういったもののが蓄積されて形になる。義勇は、人を使うことが不得手だ。誰かの下で刀を振るっている時はいい。だが、上の立場になった途端、全てを自分の手で守ろうとして、隊士に任せることが出来ないのだ。頼ることが出来ないのだ。これは、義勇の自己肯定の低さから来ている。純粋な隊士としての力量だけなら、錆兎は喜んで義勇を柱に推薦するが、柱というものは強さの象徴であると同時に、隊をまとめる責任者でもある。向いていない者が上に立っては、本人も下に付く者も不幸にしかならない。
「いいのか?」
 義勇が本当にいいのか?と、顔を覗き込む。彼女は彼女なりに、わざわざ呼び出されて、柱に推挙されたことを重く受け止めているようだ。彼女の頭を一撫でする。今は髪を下ろしているから、昼のように躊躇う必要はなかった。義勇が心地よさそうに眸を瞑る。そのままするすると手を滑らせて、項にそっと触れた。ようやく、触れた。細い首だ、女性の首だ。錆兎のお好きなように、といつでも差し出されていることは知っているが、錆兎が触れるのはそこまでだった。そこに彼女の心の熱量がなければ、意味がないのだ。
「ああ。お前はゆっくりでいい、急くな、自分の進度でいいから。」
 ありがとう、とはにかむ義勇に、どういたしまして、と微笑みかければ、義勇の頬に薄く朱が刷いた。可愛いな、と何度も思っているが、そう思わぬ日が来ることはないだろう。義勇に告げるのは、まだまだ遠いことになりそうだが。

「今日はもう寝よう。明日は昼から任務だしな。」
「錆兎、」
 義勇が錆兎の裾を引く。どうした?と錆兎が訊ねたが、義勇は自分の中の何かと戦っているのか、微動だにしない。こういう時は待つに限る。長い時もあるし短い時もあるが、義勇が自分の為にぐるぐると悩んでいる様を見るのは嫌いではない。この時間はまるごと、錆兎の為の時間であるからだ。
 今日は早々に決着がついたのか、がばりと顔を上げた義勇の眸には、決意が見て取れた。うん?と錆兎が先を促せば、義勇がそっと錆兎の両肩に手を置いた。ぬくい。どうしたんだ?と聞くより先に、再び錆兎の膝に乗り上げてきた。少しばかり高くなってしまった目線を合わせるように、義勇が目を伏せた。目尻が赤い。それだけで、彼女の魅力が匂い立つ。
「俺は、別に構わない。お前のしたいようにしてくれ。」
「宇髄に何か吹き込まれたか?周りのことなど気にするな。急くな、と言っただろ。良いんだよ、俺は。」
 義勇は確かに何かを決意したのかもしれない。けれども錆兎とて、己の決意は揺るがない。笑いかければ、義勇も、ごめん、と呟いた。義勇の腰に手を添えて持ち上げながら、錆兎も腰を上げる。女性にしては長身だが、これでも柱の末席に名を連ねている錆兎だ、彼女の重さなど大したことはない。義勇と共に立ち上がって、そろそろ寝よう、おやすみ、と促す。湯呑みは俺が片付けておくから、その代わり、朝餉はお前が作ってくれ、と言えば、わかった、おやすみ、と義勇も頷く。錆兎は義勇の頭を一撫でして、もう一度おやすみと微笑みかけたのだった。





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まだくっ付けませんよ。まだまだねばりますよ、わたしは。
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