× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 TOZです。 5の続きです。 ラストに向けての準備期間です。 素直にザビミク書いとけばいいのに、 ちょいちょいゲームの疑問を自分なりに捏造したりしてます。 こういうことやるから時間かかるんですけどね。 自分のことなのに儘ならないもんです。 ちょこっとだけ、ライラさんとお話します。 ロゼもアリーシャも既婚者です。 でもって、それなりにええ歳です。 何歳とは言わないけれど。それなりに、まあそれなりに。 ミクリオがロゼとアリーシャに恋愛相談をしていた頃、ザビーダもザビーダでライラとエドナに愚痴を零していた。端からザビーダは己の想いを隠す気はなく、アリーシャを除き全員にばれていると思っているし、それは概ね正しい。ただ、彼女たちはザビーダを応援するでもなく、ミクリオをかばうでもなく、傍観を決め込んでいる。天族は女性であっても子を産むことができない。子孫を残すことができない。恋愛感情がない、というわけではないが、人間のように差し迫った状況がないせいで、一生パートナーを見つけることなく終える天族も珍しくはない。性欲もないわけではないが、あくまで合わせ持っている程度のもので、恋愛相手に求めるものはセックスよりも寄り添う温度であったり、心の安らぎだ。身体を合わせぬ天族も多い。 ザビーダももちろん、そういった天族の一人である為、天族の性質は重々承知しているが、ザビーダは天族の中でも特筆した快楽主義者だ。相手は女だったり男だったり、天族だったり人間だったりした。ただ誰でも手当り次第というわけではなく、一人一人に誠実に付き合ったし、一人一人をちゃんと愛していた。ザビーダは人間のように愛することが好きだ。彼らのように、恋愛することを殊更好んだ。 「添い寝してほしいなんて、ミク坊は俺をどうしたいんだ、って、特に考えてねぇんだろうなあ。スレイと言い、ミクリオと言い、どうやったらあんな無垢に育つんだか」 「ベッド=そういうことに変換される時点で、あんたは既に終わってると思うけど?」 聖堂の階段に腰掛け、うだうだと愚痴るザビーダの肩に、エドナの傘が刺さる。ライラはあらあらあら、とザビーダのぼやきを聞いてはいるものの、エドナを止める様子はない。ウーノは輪に加わらず、遠目から三人の様子を眺めているだけだ。 「あんだけ一緒に居ながら、ミク坊、ちっとも俺を疑わないんだぜ?普通、何かしら勘繰るだろ?」 「ミクリオさんはザビーダさんのことを信頼しているのですわ。『ザビーダってなんてお人好しなんだ!』って感動してらっしゃることでしょう。ほら、お株も上がってお得ではありませんか」 「これがお人好し?ライラも冗談きついわ」 ミクリオと同居を始めてからこちら、エドナの風当たりが強い。ミクリオを弟のように思っているのは分かっているが、悪い虫が付きようがないのだから少しは勘弁してほしい、というのがザビーダの本音だ。ミクリオは残念ながら、誰かの好意であれ悪意であれ、気付くことのできる程、恋愛感情を察知する感性が育ってはいない。 「ザビーダさんたちはこれからどうなさるのですか?また旅に?それとも、この生活を続けて行くのですか?」 「そろそろ前衛の壁が欲しいと思ってたところだし、また一緒に旅するの、許してあげてもいいけど?」 エドナの珍しい提案にも、ザビーダはあまり乗り気ではない。そもそもミクリオの真意が分からない以上、彼女たちの誘いに頷くことができないのだ。レディレイクはイズチにほど近い。このまま帰るつもりなのかもしれない。ミクリオはザビーダとの同居をどう捉えているのだろうか。 「あー、そのことなんだけどよ。ミク坊、なんも言わねぇんだわ。もしかしたら、このままイズチに帰るつもりかもしれねぇ」 「あんたはどうしたいのよ」 「はい、ザビーダさんはどうしたいのでしょう?」 私の知っているザビーダさんはもっと強引な方でしたよ、とこちらがくすぐったくなるような、微笑ましいものを眺めるような目を向けられて、ついついザビーダもそっぽを向く。そういう目を向けるのが自分の役目であって、向けられる側はもう随分と前に卒業している。嬉しさよりも気恥ずかしさが先行するのは仕方がないだろう。 「ライラ、分かって聞いてるだろ」 「さあ、何のことですか?」 まったく食えない女だ、とライラを褒めながらも、この場に居てもライラとエドナの飴と鞭の追及が続くことは簡単に察することができた。そろそろロゼたちと合流するかと、俺様覗いてくるわ、とザビーダは腰を上げたのだった。 その後、入れ違いになる形であったものの、ロゼがライラたちに声をかけて、ディフダ邸に全員が集まった。丸テーブルを六人で囲んでいる。ミクリオは当然のことのようにザビーダの隣りに腰掛けた。六人で旅をしていた頃であったなら、ミクリオの隣りにはスレイが、スレイの隣りにはミクリオが、いつの間にやら座っていた。無意識の行動らしく、けれども彼らにとってはそれが当然であるようで、誰もからかうことすらできなかった。ザビーダだけでなく、ライラたちもミクリオの行動の真意を分かりかねていた。 「無事執筆を終えられたようですね。おめでとうございます」 「そんな大袈裟なものじゃないよ。でも、ありがとう」 「それで?あんたの引きこもり生活は終了なわけ?」 エドナの少々棘のある言葉にミクリオは苦笑しつつ、それなんだけど、と皆を見回した。 「僕は天族としての経験が短いから知らないだけかもしれないんだが、旅の記録をまとめていて思ったんだけど、マオテラス以外の五大神ってどうなったんだろうって思ったんだ」 ロゼやアリーシャは、同意するように頷く。天族の村で育ったミクリオだが、スレイという存在があったおかげと言うべきか、天族の常識に疎いところがあった。語り部の存在を知らなかったのもそうだ。だから感覚としては、人間に近いところもある。ライラだけでなく、ここに居合わせている天族であったなら、その疑問は口にしないだろう。五大神の存在を疑ったことはない。先代導師・ミケルの際、マオテラスの器の移動に手を貸したライラはもちろん、ザビーダもエドナも、手の届かない存在という認識はあるが、もしかしたら創作ではないか、架空の存在ではないか、と思ったことは一度としていない。ただ、文字通り、会うことの叶わない高位な存在なのだ。彼らはどうなったのだろう、どこへ行ったのだろう、などと、考えに及んだこともない。 「マオ坊の存在が知覚出来たのは、本当に奇跡のような確率なのよ?そんなの、考えたこともないわ」 「でも、五大神ってすんごい力持ってるんでしょ?なら、浄化に協力してもらえたら、すごく捗るんじゃない?てか、もしかしたら、マオテラスの浄化も早く終わるんじゃない?」 それはすなわち、何年なるとも知れないスレイの目覚めに繋がる。 「可能性としてはゼロじゃないと思うんだ。どうかな?」 ミクリオが一人一人を見回す。エドナがつまらなさそうに鼻を鳴らす。ザビーダはさり気なさを装って目をそらす。珍しいこともあるものだ、とライラはその様子を眺めながら、ミクリオににこりと微笑み返した。 「確かに、ミクリオさんの考えにも一理ありますわ。ただし、本来五大神は隠された存在です。どこにいらっしゃるのか分かりませんし、守護天族から教えて頂けたとして、会ってくださるかは別問題です」 「無駄ってことか」 「いえ、試してみる価値は大いにありますわ。ただ、」 ライラが目線を落とす。彼が前向きに歩き出そうとしているのに、釘を刺すのもとは思うが、まだまだ若い天族にそれをはっきり告げるのも己の役割だとも思う。一瞬の躊躇いの空白の間は、どんな場面でも物怖じせずに憎まれ役を買って出てしまうエドナによって埋められてしまった。別に、他人からどう思われようとどうでもいいわ、と傘の中にこもってしまうエドナの優しさを知っているライラは、ひどく申し訳ない気持ちになる。かつての旅で、アリーシャにマルトランの真実を告げたのも彼女だ。 「期待はしない方がいいわ。秘力を授ける為だとしても、守護天族があたしたちに協力してくれたこと自体が超レア、激レアなんだから。行ったところで肩透かしに会う可能性の方が高いでしょうね」 「それでも、ゼロじゃないんでしょ?」 とにかく前へ前へと突き進むのがロゼだ。彼女は既にミクリオの提案に乗り気のようだ。アリーシャもどこか期待した眼差しをロゼに向けている。残念ながら、ハイランドの要職に就いている彼女が旅に同行できるとは思えないし、アリーシャ自身も分かっていることだろう。それでも本来の性質としては、スレイと同じ遺跡探検を好む彼女だ、都合が付けば合流するぐらいやってのける図太さをこの数年で身に着けていた。 「まあ、ゼロじゃねぇだろうなあ。けど、エドナちゃんが言うみたいに、期待はするなよ。その分、余計にヘコむことになるかもしんねぇからな」 「なにしおらしいこと言ってんの!そん時はそん時!そうやってあたしたちは進んで来たでしょ?」 ね?と一番同意を得やすと思ったであろうミクリオに振れば、ミクリオもロゼの前向きな姿勢に後押しされたのか、うんと大きく頷いた。こうして、再び試練の遺跡を巡るという旅の目的を見つけた一行だった。 * じゃああたし準備あるから!と大はりきりのロゼの号令で、その場は解散となった。と言っても旅の準備はロゼに任せるしかなく、天族たちは暇を持て余すこととなった。 ミクリオは久しぶりのレディレイクの街を散策している。この街がミクリオとスレイの旅の始まりだ。どこを見回しても、スレイとの思い出が広がっているような気がした。街並みは大きくは変わっていない。新たに区画が増えてはいるものの、元々の景観は守られていた。あの時の君はアリーシャの心配でいっぱいだったね、と、つい隣りに笑いかけてしまってから、しまった、と思った。もう慣れたと思っていたのだ。だって、何年も経った。まだスレイと共に生きた年月を超すことはないが、それでも無意識に、なあスレイ、と呼びかけることはなくなっていた。乗り越えられたと思った山が、まだ目の前に聳えたっていると感じた瞬間、ミクリオは途方に暮れた。僕はちっとも強くなれない。 * 「ミクリオさん?道の真ん中でどうされたのですか?」 ミクリオと話しがしたい、と思っていたライラはミクリオの姿を探していたのだが、見つけるなり彼の様子がおかしいことに気付いた。天族は人間には見えないが、触れることはできるのだ。人通りの少ない路地とは言え、真ん中で立ち止まっていれば、誰かの肩に触れることもあるだろう。 ミクリオは弾かれたように振り返って、強引に笑顔を作った。私の知っているミクリオさんの笑顔は、もっと屈託のない顔で笑いますわ。もっと取り繕わず、相好を崩して、まあまあ折角整った顔なのに勿体ない、と思うのだけれど、そんな表情が出来るミクリオがライラは好きだ。 「ちょっと考え事をしててね」 「それはいけません!暗いことを考えているお顔をされていますわ。考え事をするのなら、私も混ぜてください」 「大袈裟だなあ」 「そうでしょうか?」 「ライラが急に話かけるから、なに考えてたのか吹っ飛んじゃった」 それは明らかに嘘とも言えない幼い誤魔化し方だったが、ライラはあえて見ない振りをした。それを慰めるのはライラではない。彼を甘やかせるだけ甘やかして、優しい膜で覆うように彼を慈しみたいと思っている存在があるからだ。正直、彼がそんな風に人を愛するのは意外だったが、情の深い男であることは分かっていた。でなければ、かつて出会ったことがあるというだけで、もういなくなってしまった風の天族の代わりを務めようなどと思わないだろうし、ドラゴンになってしまった親友を解放する為に、エドナからどう思われようとそれを貫いたりもできないだろう。私の周りには、すすんで憎まれ役になろうとする方々が多くて困りますわ、と頬に手を添えた。 「ミクリオさん、少し、お話しませんか?」 できれば落ち着いたところで、と言ってライラが選んだのは、ヴィヴィア水道遺跡内の、かつての祭壇だ。ウーノの領域内ということもあり、憑魔の姿はない。 「思えば、こうして二人きりでゆっくりお話しするのは初めてですわね」 「そうだね」 「私は以前、スレイさんを導師にしたことに後悔はないと言いました。ですが、ミクリオさん、あなたを陪神にしたことに後悔がないと言えば嘘になります」 ミクリオはじっとライラの目を見つめる。ライラの言葉をさえぎるように、なんで?どうして?と問いをぶつけなくなったのは、彼なりの進歩だろう。彼はまるで人のような速度で成長している。 「本来、天族の成長はとても緩やかです。ミクリオさん、あなたはあまりに天族として幼かったですわ。もっともっとゆっくり、たくさんの慈しみを受けて、たくさんの愛情を受けて、まだ綺麗な世界で生きていても良かったのです。それを、私が奪ってしまいました。あなたは常々、もっと天族として成長したい、もっと力をつけたいと仰っていましたが、私からすれば、あなたのお歳でそれ程の力を操ることのできる天族を知りません。あなたは十分過ぎる程でした。ただ、比較対象が悪過ぎましたわ」 まるで宝石のようだ。スレイの瞳はエメラルドのようであったし、ミクリオの瞳もまた、アメシストの透明さを持っていた。穢れることなく、きれいなきれいな宝石まま、ここにある奇跡をライラは本当に嬉しく思っている。 「私はもとより、エドナさんもうんと年上です。彼女たちと同様の力を持つことなど不可能なのですわ。それでも、ミクリオさんは悔しいと仰るのでしょうね。あなたはとても純粋で透明で、反面、すぐに穢れてしまうのではとずっと危惧していました。私はあなたの本当の強さを見誤っていましたわ。もちろん、嬉しい誤算でした」 「それは、ライラの見立て以上だったってこと?」 ええ、それはそれは。 ライラが手放しで褒めれば、褒められることに慣れていない彼は、少し赤くなった頬を隠すように手の平で顔を覆った。可愛い可愛い、同族の幼子。けれども彼はそう言って慈しまれることをもう望まないだろう。僕はもう守られる存在じゃないよ、と、丁寧に、けれどもきっぱりと、伸ばされた手をはねのけるだろう。 「ミクリオさん、もうこれ以上生き急ぐ必要はありません。…スレイさんと同じスピードで成長する必要はありません。ゆっくり歩くことを覚えましょう?私も、もちろんエドナさんもザビーダさんも、手伝ってくださいますわ」 「僕はスレイに合わせていたわけじゃないよ。そうしたいと思ったからそうなったわけだし」 では、そういうことにしておきますわ、と食い下がるライラに拍子抜けしたのか、呆けた顔をするミクリオの、ころころとよく変わる表情を眺めながら、話は変わりますが、とがらりと話題を差し替えた。 「ザビーダさんのことですが、本気ですか?」 天族は嘘をつくと穢れてしまう。だからこそ、彼がロゼに告げたことは彼の中では事実なのだろう。けれど、本当に? 「ロゼが話したのか」 「そこは御想像にお任せいたしますわ。…ミクリオさん、確かにザビーダさんはあなたと長い時間を共にしました。時に甲斐甲斐しくあなたを世話したかもしれません。その親切をあなたは勘違いしているのではと、心配しているのですわ。私だけではありません、ロゼさんもエドナさんも、アリーシャさんもです」 目をそらそうとするミクリオの手を握り、本音を聞くまで離さない、と意思を込めて、ぎゅうとミクリオの手に力を込めた。 「スレイさんがいなくなってしまったからと言って、誰かを代わりにする必要はありません。スレイさんは必ず目覚めます。それまで待っていてもいいんですわ。私たちの寿命ならば、それも可能です。無理に恋をする必要なんてどこにもありませんわ」 「ロゼもそうだけど、なんでそこでスレイが出てくるんだい?僕は確かにスレイのことを大事に思っているけれど、それとこれとは別だ。ザビーダへの想いと、スレイへの思いを混同したことなんてないし、できやしないよ」 ライラからすれば僕はまだまだひよっ子でしかないだろうけど、恋の区別くらいは知ってるよ、と今度はミクリオがぐっとライラの目を見つめ返す。 「まだ僕たちが、人間と天族の違いがよく分かってなかった時だ。ジイジやイズチのみんなが色々と教えてくれたよ。寿命の違い、身体の違い、考え方の違い、成長速度の違い。僕たちはすぐにそれらを飲み込むことはできなかったけど、もうそれらを受け入れている。スレイの死を見届けることになることぐらい、僕ももう理解していたよ。覚悟もとうにしてる。…たくさん、泣いたけれど。でもそういうものだから、今では笑い話になるくらいだ。ライラ、僕たちは君たちから見ればとても未熟な存在だったんだろう。けど、それでも、乗り越えてきたものがあったんだ。スレイとね、約束してたんだ。スレイもいつかは可愛いお嫁さんをもらって子どもが生まれて、その子がまた結婚して子どもが生まれて。そしていつかはスレイも死ぬ。僕はスレイの代わりにスレイの家族を見守っていくんだ」 この約束は、今も有効だと思っているよ、と、ミクリオは少し寂しそうに微笑んだ。自分などが聞いてしまったよかっただろうか、とライラが躊躇うように視線をさ迷わせれば、ライラの意図を汲んだのか、ライラだから言ったんだ、と今度は顔いっぱいに笑顔を見せてくれた。子どもは成長が早いと言うが、ミクリオの気遣いはライラを驚かせてばかりだ。 「一応釘を刺しておくけど、絶対ザビーダに僕の気持ちは言わないでおいてくれよ。ザビーダは絶対に女性しか恋愛対象にしてないからね。これからゆっくり、僕を意識してもらうつもりだから。全く、いつまで経っても子ども扱いで、ホント困るよ」 やれやれ、と言った様子で肩を竦めるミクリオは大人びた様子であったものの、本当に恋愛の駆け引きが彼にできるだろうか、と思わせる言動のせいで、ライラはふふ、と笑みを漏らしてしまったのだった。 PR |
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