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錆義です。
書いてる本人は、錆義に収束すると信じてるので、錆義です。
この間に色々、では済まない色々があったんですが、とりあえず書きたいとこだけ。
この辺りから、文章が密集し出すのと、読んでも読んでも終わらない地獄が始まります。
書いてる時は楽しいけど、読み直すのしんどい。

原作の柱合会議の辺りです。あと、錆義はくっ付いてません。
あ、真菰さんもいるよ。





 錆兎は那田蜘蛛山での被害状況を、柱合会議の直前に知った。お館様に謁見するいつもの庭へと向かう道すがら、直接胡蝶しのぶから聞いていた。本来なら蟲柱・胡蝶しのぶと共に向かうのは錆兎だったが、直前に受けていた任務が自分が柱として受け持っている範囲の端であった為、急ぎ戻ったところで手遅れになっては、と水柱の己ではなく、同門の義勇が派遣された。甲になって久しく、錆兎が先に柱になっていなければ、間違いなく義勇が水柱になっていただろう。実力としては申し分ないと判断されたのだ。下級隊士ばかりとはいえ凄惨な状況に、もしかして義勇も怪我をしたのでは、と曇った表情を読まれたのか、
「冨岡さんに怪我はありませんよ。愛想のないところまで、まったくいつも通りです。」
 そう言って、姉によく似た笑顔を貼り付けていたが、その表情に少しの怒りがあることに、錆兎は僅かに引っかかりを覚える。胡蝶は、年々愛想をどこかへ落としてくる義勇の、本人に言えば否定必須ではあるが、よき理解者であると錆兎は思っている。義勇はいささか辟易しているようだが、顔を合わせれば義勇をからかいに行くその心意気を、錆兎はあっぱれとすら思っている。あまり義勇が嫌がるようならば助け船を出す気はいるが、同性同士の付き合いに異性の己が口を出すのもおかしいだろう。そう、冨岡義勇は女性だ。本人は少しも隠していないが、女性にしては背が高く声は低い為、周りからは何の疑いもなく男だと思われている。自分の容姿に無頓着で、仕事があろうがなかろうが隊服を着ているし、訪問着も真菰が揃いで作ったものがあるだけで、それも箪笥の肥やしになっている。鍛錬漬けの錆兎と同じ内容をこなすだけあって、言いたくはないが肉付きは悪い。女性らしい柔らかさとは縁遠いものだ。長襦袢姿になれば、かろうじて胸の盛り上がりが分かり、更には身体の線が際立ち、誰も男とは間違えないだろう。細いというよりは、必要な脂肪を全てそぎ落とした身体である為、残念ながら尻は薄い。身体の線を隠してしまえば、どこをどう見ても細身の男性なのだ。ちなみに、何故錆兎が義勇の長襦袢姿を知っているかというと、水柱邸に共に住んでいるからであって、それ以上でも以下でもない。もちろん同門で姉弟子の真菰も一緒であるし、時々は最終選別から何かと縁のある村田も顔を出す。一般隊士の中では、錆兎と義勇が男色の仲であると誤解している者も少なからずいるが、色々と間違っているのだ。そう色々と。義勇の身に着けている羽織が、以前錆兎が着ていた物と繋ぎ合わせにされていることもあり、その勘違いを助長させている一因でもある。蓋を開けてみれば色っぽい理由ではなく、以前義勇は姉の形見でもある臙脂色の着物を羽織に使用していたが、任務で重傷を負い、血の痕が取れなくなってしまったのだ。同時期に錆兎も怪我をし羽織に大きな染みを作ったのだが、真菰が冗談で、無事なところを繋ぎ合わせると一枚の羽織になるね、と言ってしまったものだから、義勇は真菰の言葉を真剣に受け止め、丁度左右で半々になった羽織を長年愛用している。錆兎としても、父の形見であったので捨てるのも忍びなく、義勇も大事に使ってくれているので文句はないのだが、宇髄辺りから、独占欲の塊かよ、とも言われているので、まあ思うところがないわけではない。どうにも自分の身を蔑ろにしがちなので、少しでも抑止力になってくれれば、と思っていることも事実だが、事前情報で強い鬼だと聞いている場合は羽織を置いて行くこともあるそうなので、中々錆兎の目論見通りにはいかないのが義勇なのだ。

「義勇の怪我がないのも良いが、しのぶも壮健そうで良かった」
「柱ですから、そう簡単には怪我をしませんよ。ただ、心配してくださる人がいるというのは嬉しいものですね。柱になってからでしょうか、そういう声をかけてくださる方がめっきり減ってしまいました。」
 妙齢の女性の名を呼び捨てるのはどうかと思われるかもしれないが、胡蝶に関して言えば、姉であるカナエとも交友があるので、手っ取り早く区別する為だ。また錆兎自身、師である鱗滝左近次の養子に入っていることから鱗滝の名字を与えられているが、師と同じ姓で呼ばれるのはくすぐったく、未だに慣れない。せめて実力が伴ってから、と自分に課しているので、自己紹介をする際には、名前で呼んでくれ、と告げている。失礼にあたらない範囲ではあるものの、基本的に錆兎は、名字ではなく名前で呼ぶようにしている。

「今回の鬼だが、十二鬼月だったのだろう。斬ったのは君か?」
「冨岡さんですよ。多分、十二鬼月だとも知らずに斬ったんでしょう。いい加減、柱になればいいのに。」
 胡蝶はそう肩を竦めたが、その底の見せない穏やかな笑顔のまま、先と変わらぬ雑談の調子で、ひやりと錆兎に釘を刺した。
「それはそうと、今日の会議ですが、私は誰の味方もしません。錆兎さんも覚悟しておいてくださいね。」
 胡蝶の言葉に、思わずゆったりと廊下を進んでいた足を止めた。胡蝶は二歩三歩進んだところで、くるりと錆兎を振り返った。相変わらず、姉とそっくりな顔で、感情の読めない笑顔を貼り付けている。
「おや、聞いていないんですか?鬼を連れた隊士がいるんですよ。そして、それを見逃したのが―――、」



 庭へと到着した頃は、既に一悶着あった後のようだ。明らかに重傷を負っている炭治郎が、目だけは爛々に光らせながら、杉の箱を背に、風柱・不死川実弥を睨み付けている。不死川の殺気はすさまじい。まだ隊士になりたての炭治郎には息苦しいだろうに、彼は怯むことなく、怒りに燃えた目で不死川を睨み付けていた。杉の箱には確かに鬼の気配があった。これが件の鬼だろう。そして、本来柱以外は立ち入ることのできない場に、もう一人。義勇だ。彼女は離れたところで、静かに佇んでいる。その眸に、感情の揺れはない。常に静かな水面が、そこにはあった。義勇もこちらに気付いたのか、ふっと錆兎へと視線を向ける。けれども、錆兎の目と合わさる前にそらされてしまった。義勇、と声をかけるより先に、閉じられていた襖が開かれた。

「お館様のお成りです。」



 裁判の行方は、錆兎が予想していた通りだ。鬼殺隊である以上、いや、鬼殺隊であるからこそ、鬼への憎しみは強い。胡蝶しのぶの姉である元花柱がこの場にいたのであれば、まだ炭治郎の味方になったかもしれないが、現柱にそのような考えがある者はいない。かく言う錆兎ですら、そうだ。鬼は斬られねばならない。滅ぼさねばならない。自分の大切な人を殺されないために、今を精一杯生きている人のために、命の心の魂の尊厳を穢されぬために。義勇、俺はお前が分からないよ。何故、生かした。何故、殺してやらなかった。柱の彼らが言うことは、全く以てもっともだ。鬼に綺麗事は通じないのだ。それを、義勇も知っているだろうに、何故、

『”もしも禰豆子が人に襲いかかった場合は、竈門炭治郎及び鱗滝左近次、冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します。”』

 何故、お前が、先生が、そこまでせねばならないのか。義勇の気配を探ったが、感情に揺らぎはなかった。ただ、炭治郎は大粒の涙を流していた。涙を流すことのできるこの少年は、根っからの善なのだろう。彼は正しく人の感情を受け止められる。彼が鬼を連れてさえいなければ、錆兎は彼こそを己の後継に、と喜んで受け入れただろう。あれは彼が、狭霧山で最終選別へ向けて鍛錬していた頃だ。師からの手紙で炭治郎のことを知った錆兎は、任務の合間に真菰と共に狭霧山へと向かい、巨大な岩を斬れるまで鍛え上げた。己が倒せなかった鬼を、彼こそが滅してくれるように、と。それなのに、何も知らなかった。師の心遣いであることは分かっていた。義勇の不器用な優しさだと、十分に分かっていた。それでも、自分の不甲斐なさに腹が立った。柱になっても尚、俺は義勇に守られている。

 不死川と伊黒を中心に、炭治郎を責め立てていた。流石に見かねて伊黒を制し、押さえ付けている炭治郎を解放する。文字通り、不死川が血を流したおかげで、この場では禰豆子が人を喰わないことの立証はできた。炭治郎は禰豆子と共に強制的に退去したが、この裁判での一番の問題はこの次だ。
「冨岡、次はてめェの番だぞ。」
「鬼を見逃すなど、どういうことだ。説明しろ、説明しろ、俺たちに分かるようにな。お館様の御前でだんまりを決め込むつもりもあるまい。」
 義勇は庭の隅に膝をついたまま、不死川を見、伊黒を見、次いで順番にぐるりと辺りを見回し、――錆兎だけはちらりと視線で撫でただけだったが――、最後にお館様を見て頭を垂れた。離れている義勇にも聞こえるように舌打ちをしたのは不死川だった。彼と伊黒は、錆兎達との入隊時期と近かったこともあり、新人時代も合わせて何度か任務を共にしたことがあった。また、錆兎と義勇は時間が合えば共に行動をすることも多いので、柱全員とも面識があったし、柱に近い実力を持ちながらも錆兎の継子ではないので、自由に使える人材として案外重宝されている。柱が派遣されるような任務に同行することも、ままあった。そして柱の中では、この声を荒げる二人と義勇との相性の悪さもまた、有名だった。個人個人は決して悪い人間ではない。癖は、かなり強いが。それでも、錆兎が仲介したくなる程、時に激しく(と言っても一方的だが)ぶつかることのある三人なのだ。
 そうして三人の人間関係に思考を飛ばしてしまう程、今の錆兎は混乱していた。義勇のことは理解したいし、理解できると思っている。長い付き合いだ、義勇の難解な思考回路もある程度は分かるし、無表情と言われているが、その内にたくさんの優しい感情を宿しているのを知っている。ああそれでも、言ってくれなければ、わからないこともあるのだ。
「義勇、前へ。皆と同じところまでおいで。」
 お館様の言葉に、義勇は小さく「御意、」と呟いて、ゆっくりと進み出た。義勇の眸は、相変わらず静かだ。人が立ち入ることのない、御禁制の湖畔のようだ。錆兎は、その波風のない鏡のような水面が、時々おそろしくなる。
「ゆっくりでいい。義勇の言葉で説明しておくれ。」
 口を小さく開いて、そしてまた閉じて。言葉を探している時の癖だ。そして大半は、想いが言葉にならず、諦めて口を噤んでしまう。お館様の言葉は、それを見越してのことだったのだろう。義勇は手をつき、頭を垂れた。

「錆兎は、水柱は関係ありません。すべて、わたしの独断です。鱗滝左近次殿もわたしに合わせてくださっただけです。すべての責はわたしにあります。」

 抑揚のない声だった。よく知っている錆兎ですら、これは誰だ、と言いたくなるような、冷たい声だった。ついつい表情が硬くなる。反面に、心は強い憤りを感じていた。関係ないとはなんだ、義勇。そんなことを言ってくれるな、言うな、言うなよ、と感情のままに怒鳴り散らしたかったが、ここはお館様の御前であり、己は水柱だ。落ち着け、感情的になるな、とゆっくりと呼吸を巡らせる。
「オイ、んなことはどうでもいい。死にたければ、さっさと鬼斬って死ね。それよか、お前があの鬼を生かした根拠はなんなんだよォ。」
 不死川の殺気に、びりびりと空気が揺れた。義勇は刹那、顔を上げかけたが、もう一度深く頭を垂れた。
「・・・ない。」
「は?フザケてんのかァ。」
「お館様の御前で、ふざけてなどいない。」
「おい冨岡、貴様よくそんなことが言えたものだな。自分の発言が分かっているのか、いや分かっているとは思えんな。貴様、まさか、根拠も理由もなく、なんとなく、とでも言うつもりか?馬鹿げている、馬鹿げているぞ。」
 伊黒の言葉を受け、義勇はゆっくりと顔を上げた。伊黒に向けられたその表情は、錆兎には死角になって見えなかったが、それを見た伊黒と不死川はこめかみをぴくりと引き攣らせた。義勇が彼らの神経を無意識に逆撫でしてしまった時の反応だった。
「あの二人を助けたのは、多分、俺も分からない。本当に、なんとなくとしか、言いようがない。」
 ことの成り行きを見守っていた音柱・宇髄天元が吹き出し、声を上げて笑っている。この男は、時に素っ頓狂なことを言ってしまう義勇の行動がツボに入るらしい。反対に、よもやよもやと空を仰ぎ見ているのは炎柱・煉獄杏寿郎だ。他の面々も、宇髄のように笑いはしていないが、なんとも形容しがたい表情をしていた。錆兎も、義勇の命の関わらぬことであったのなら、仕方のない奴だなあ、とすませてやりたかった。ちらりとお館様の顔を見る。いつもの穏やかな表情のまま、皆の様子を見守っていた。

「お館様。」
「なんだい?」
 義勇は再びお館様に向き直り、ばさりと隊服の上着を脱ぎ捨てた。いつもはその下にシャツを着ているのだが、今は肌襦袢のみのようだ。分厚い上着を脱いだだけで、彼女が女性であることが、嫌でも分かる。身体の線がくっきりと出てしまうのだ。
「切腹の許可を。隊律違反をしたことに間違いはありません。罰を、」
「義勇。」
 どこに隠し持っていたのか、短刀を取り出した義勇の行動をさえぎるように、いっそうはっきりとお館様は義勇の名を呼んだ。錆兎は、彼女の短刀をつい凝視してしまった。見覚えがある、どころではない。それは最終選別で折れてしまった、錆兎の刀だ。短くなってしまっているが、七日間を共にした刀だ、間違えようがない。
 錆兎の動揺をよそに、義勇が、ですが、と珍しく言い募る。
「あの時は許可いただけませんでしたが、やはり罰は必要です。わたしは、やはり鬼殺隊に相応しくありません。」
「相応しくないと、自分を卑下するものではないよ。」
 お館様の声に、激情がゆっくりと引いていく。それは義勇とてそうなのだろう。揺らぎのない眸、動きのない表情に見えるが、口唇の端が僅かに震えている。抵抗しているのだ。鬼殺隊にあるまじきだが、お館様になだめられまい、と。どうしてお前は、そこまで自分を許してやることができないのか。
「私は君の勘を信じる。女性の勘は侮れないからね。それに、罰と言うけれど、義勇の罰はもう先程のやり取りで決まったよ。君が腹を切るのは、禰豆子が人を襲った時だ。私は、そんな日が永遠に来ないことを祈っているよ。」
 さて、義勇はもう下がっていいよ、という合図で、まず動き出したのは錆兎だ。自分の羽織を彼女にかぶせようとしたのだが、それよりも先んじたのが、隣りで距離が近いこともあった不死川だった。義勇が脱ぎ捨てた上着を、ばさりと乱暴に頭から被せたのだ。
「見苦しいもん晒してんじゃねェよ。」
 そう吐き捨てて、犬猫を追いやるように、しっしと手を振っている。それに真面目に応えてしまうのが義勇で、不死川の言葉を額面通り受け取り「すまない、目汚しだったな。」といそいそと上着に腕を通している。そのまま、錆兎と一度も視線を合わせることなく皆の後ろを通り過ぎようしたところで、
「義勇、」
 と、反論を許さぬ強さで彼女の名を呼ぶ。言いたいことはたくさんあるが、あり過ぎて言葉にならない。とにかく、彼女と話さなければならない。
「この後、屋敷で待っていろ。その短刀のことも含めて、聞きたいことが山ほどある。」
「駄目だ。」
「義勇!」
「任務が入っている。」
 は?と思わず呆けてしまった錆兎に、会話は終わったと思ったのだろう、そそくさと通り過ぎようとする義勇を、再び違う声が引き止めた。煉獄であった。
「よもや、君は女性だったのか!男だと思っていたぞ、すまなかったな!」
 義勇は煉獄に何と言い返していいのか分からなかったのだろう、煉獄の顔をじっと見つめていたが、煉獄はそれだけだ!と告げたことにほっと息を吐いて、最後に、義勇はお館様にぺこりと頭を下げて、その場を去ったのだった。


 義勇が退室し、多少義勇のことで紛糾したものの、通常の柱合会議が終わり、場は解散となった。いつもならばさっさと帰ってしまう面々なのだが、今日は煉獄が引き止めていた。
「冨岡が女性だったとは!共に任務をこなしたこともあったのだが、人は見かけによらぬものだ!俺は今日初めて知ったのだが、不死川や伊黒は知っていたようだな!」
 煉獄の無邪気な言葉に、不死川と伊黒は顔を見合わせ、ちらりと錆兎を見た。錆兎としても、この二人が義勇の性別に気付いていたとは思っていなかったので、煉獄が意外だと含みを持たせたことに同意したい。だが、その後の反応を見る限り、あまり人に知られたくないような様子であることに、思わず錆兎も眉を寄せる。義勇のこととなると途端沸点の下がる錆兎を知っているだけに、二人も微妙な顔で錆兎を見返していた。
「私もあれ?って思ったんです。私としのぶちゃんは知る機会はいっぱいありますけど、お二人はいつ知ったんですか?冨岡さん、一見すると素敵な殿方にしか見えないんですもの。」
 甘露寺は頬を染めながら、ねえ伊黒さん?と、こちらも無邪気に訊ねている。甘露寺に名を呼ばれてしまえば、伊黒も応えないわけにはいかない。彼の個人的な事情ではあるものの、だ。
「まだ新人隊士だった頃に、任務の時に少し、」
 珍しく歯切れが悪い。不死川は伊黒に矛先が向けられたことで、こっそりと去ろうとしている。残念だが、そううまくはいかない。
「お前が言い淀むのも珍しいな、小芭内。実弥、お前もそう思うだろう?お前も同じ場にいたのであれば、お前の口から教えてくれないか?」
 ゲッ、とあからさまに嫌がる素振りを見せたが、錆兎は笑顔で不死川に近付き、なあ?と顔を覗き込む。吐くまで逃がす気はさらさらなかった。
「伊黒の言った通りだ。若い頃に一緒になった任務で偶然知った。以上、それだけだ。」
「どういう状況で?義勇はあの通り、あまり話すのが得意ではない。更に、自分が男だと思われていることも気付いていない。そんな奴から、どうやって聞き出したんだろうなあ?」
 あまり話すのが得意ではない、と言ったものの、柱の面々は、壊滅的に会話が出来ない、むしろその機能が死んでいるとすら思っていることも、もちろん錆兎は知っていた。だが、今はそこではない。不死川は若いと言ったが、新人隊士の頃と言えば、幼いと言ってしまえる程の頃だ。何があって二人が知ることになったのか。錆兎の重要事項はそこだ。単純に考えれば、たまたま共に藤の家で休息をとった際に、風呂や部屋割りで知ったというのが妥当だが、二人の様子を見る限り、そういう分かりやすい理由ではなさそうだ。
「・・・冨岡から口止めされてんだよ。もう終わったことだ。俺は別に構わねェがよォ、冨岡は嫌がると思うぜ?いいのか、保護者の水柱様よォ。」
「え、冨岡がうっかりかましたとかじゃねぇの?」
 二人を巻き込んですっ転んだとか、二人に気付かず着替え始めたとか、といかにも楽し気に言葉を繋いだのは宇髄だ。すぅと錆兎の周りの空気が少し冷えたのに気付いたのか、二人は口々に違う、と強く告げた。義勇に口止めされているから話したくはないが、そのせいで不名誉を被ることはしたくないようだ。ここが二人の不可思議で人が善いなと思ってしまうところなのだが、あれだけ合わないと公言している義勇に対しても、約束の義理を果たすらしい。わかった、もういい、と告げれば、宇髄がえーつまんねーのー、と唇を尖らせていたが、本人に聞くからいい、と宇髄の発言を切り捨てた。まあお前ならそっちのが早いわな、と納得したようで、その場はそのまま緩やかに解散となった。



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別にそこまで引っ張る話じゃないし、書く機会もないから言っちゃいますが、二人が冨岡さんの性別を知ったのは、まだ新人の時に那田蜘蛛山クラスの大掛かりな任務があって、その時に先輩隊士に襲われてるのを返り討ちにしてるところを二人に見られる、っていう。うちの冨岡さんは自衛できる系の子です。
え、マジか、助け、必要ねぇか、って、もしかしたら宇髄の胸筋の方があるかもな、すんげぇ慎ましい胸してるけど、お前女だったのか、、、っていう。ちょっとだけ肌蹴てたんで、さらし巻いて押さえてたから、何とかあった谷間がちらっと見えた程度なんですけどね。
本来なら上への報告案件なんですが、その任務で先輩死んじゃうし、冨岡さんは全然気にしてなくてケロッとしてるし、錆兎が無駄に心配するから言うなって言うんでその約束を守ってます。

あと、短刀は、冨岡さんがこっそり折れた刀を研ぎ直してもらってて、守り刀として常に懐に入れてます。真菰ちゃんと鱗滝さんは知ってます。折れた刀だから縁起が悪いって言われたけど、錆兎の刀だから持ってたいって言われたら取り上げることができませんでした。鱗滝さんちの子は、とりあえず鋼鐵塚さんが刀を打ってくれるといいなあ。で、折れた刀を渡した時、滅茶苦茶怒ったんだけど、この頃の冨岡さんはまだちょっと泣き虫さんだったので、流石の鋼鐵塚さんも泣く子には勝てず、原作みたいに追いかけ回されることはありませんでした。多分。

段々長くなる癖、ホントよくない。
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