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中途半端な時間になってしまったので、私的英日を考えてみました。
英がツンデレになってなかったりするのは仕様です。
短文で何となく流れだけ。自己満ですが何か?



・日英同盟発足後
・同盟破棄
・日独伊三国同盟
・終戦間近
・現代







 日本は己の中に生まれた感情に、半ば絶望しながらも、その感情の存在に喜びを抱かずにはいられなかった。花立に飾られた薔薇は赤く赤く、匂いは甘く日本の鼻腔を刺激した。どうせなら一度くらい、甘い甘い、胃もたれを起こすぐらいに甘ったるい恋をしてみたかった。そう思ったことも二度、三度のことではない。このようなかぐわしい香りに包まれた恋は、きっと常人には心地良い刺激になるだろう。けれども、現実はそうはいかなかった。少なくとも日本は、この甘い毒にやられてしまっている。くるしい、くるしいと今にも逃げ出そうとする衝動を必死に理性で繋ぎとめている。彼が、悪いのではない。わたしが悪いのだ。わたしの性ではなかったのだ。甘い恋をする相手がいなかったのではない。わたしが恋が出来ないだけなのだ。

 花立の薔薇を一本、抜き取る。綺麗に棘を取り去っている茎に触れても怪我をするようなことはない。丹念な心遣いが心地良い。好きなのだ、分かっている。わたし、も、ちゃんと彼を好いているのだ。

「けれど、今以上の関係となった時、彼がわたしとの壁を知って絶望することを思うと、何も言えなくなってしまう。」




***
日英同盟発足後。










 イギリスは何度も脳裏に蘇る姿を、首を振ってどうにか追い払おうとした。視界の端の鏡に己の顔が映り、思わず自嘲せずにはいられなかった。あの男の気丈な姿と比べて、何ともみにくいかおをしているものだ。感情を露に取り乱したりして、

『さようなら、』

 感情の読めぬ声で、感情を悟らせぬ声で、彼はそう告げて一礼した。何度だって耳に響き、イギリスはその幻影から逃げる術を失った。
 正面きって彼に想いを告げたことはなかったが、彼に通じていることは何となく分かっていたし、彼もまた同様のものを抱えていてくれるのだと、イギリスはぼんやりと知っていた。それはイギリスの求める恋愛の形ではなかったが、慎み深い彼の調子に合わせて、ゆっくりと自分たちの道を作っていきたいと、それが可能なのだと、漠然と信じていた。それがまさか、こういう形で幕を下ろしてしまうとは夢にも思っていなかった。

『さようなら、』

 イギリスは舌打ちをして、その場にうずくまった。ああひどい、ひどい耳鳴りだ。これがお前との最後の思い出か。あまりにひどい仕打ちではないだろうか。
 イギリスは、彼の国の別れの言葉に、再会を祈る想いがこもっていないことを知っていたからだ。




***
同盟破棄









「日本ってさ、イギリスの話って全然しないよね。」
 本来ならば、イタリアがそう口を開いた瞬間に、ドイツの怒号が飛んでくるのだが、生憎今日は不在だ。日本はコップを手の中で遊ばせながら、そうですか?と笑った。
「うん。今はさ、こんな状態だけど、あのイギリスと同盟組んでたでしょ?で、イギリスの方がさ、何て言うんだろうね、甲斐甲斐しいって言うの?過保護?猫かわいがり?とにかくお気に入り!って聞いてたから。」
 イギリスの片思いだった?とイタリアは、こういう時ばかり積極的に日本への攻撃を怠らない。ねえ?ねえ?言いたくない?おれは恋愛ごとには寛大だよ?そう早口にまくし立て、日本の顔を覗き込む。
「わたしも、ちゃんと好きでしたよ。」
 あれ?過去系?ふふ、どうでしょうね。うわ、イギリス可哀相!イタリアは楽しげに笑いながも、日本から視線を外さない。日本は極々自然な動作で、そっと目を伏せて彼の視線から逃れた。日本の習性を知っているイタリアは、これ以上の領域に踏み込んでは来ない。ぎゅっと手を握られて、思わず少しだけ顔を上げた日本に、にこりと微笑む彼はいかにものん気そうな表情を貼り付けていた。
「おれがイギリスだったら、絶対に日本を離さないのに。日本と恋愛が出来るってすごく羨ましいよね!」
「イタリアくん、残念ながら、わたしたちはそういう関係まで行き着きませんでしたよ。」
 え~そうなの?イギリスもバッカだなあ。間延びした声が重なる。

(違いますよ。わたしが恋愛の仕方を知らなかっただけなのです。恋愛ごっこのその先を望んでいたあの人と同じ場所に立つことが、わたしは出来なかったのです。)




***
日独伊三国同盟









 無意識にコツコツと早いリズムで机を指先で打っていると、うるさいよ、とアメリカからの声が飛んだ。気が散るよ、もうまったく、ここは君ひとりが居るわけじゃないんだからね!一々イギリスの自尊心を傷付けるような台詞にも、噛み付く気力は残っていなかった。ああ悪かったな、と無愛想に音を止めれば、らしくない己の反応がつまらなかったのが、いささか不機嫌そうに、君はいっつも愛想がないよね!と乱暴に書類の束がデスクに叩き付けられた。これからの戦略が書かれた書類を、イギリスは無気力に眺めた。

「彼は中々粘るね。」
「あとは自滅するだろう。これ以上する必要はない。」
「君は何にも分かっちゃいないよね、いっそ賞讃に値するよ。仮にも彼の隣りに居た頃があったんだろう?君の目は彼の何を見ていたんだい?」

 アメリカは既にイギリスに背を向けて、部屋の窓からどんより曇った空を見つめている。ふとした動作の合間、会話の隙間に、イギリスの知らぬ癖を見る度に、腹の底にしこりがたまっていくような錯覚を感じる。遠い存在になってしまった。目の前の弟も、かの、人、も。

「彼はね、こてんぱんにしてやらないと止まらない。止まれないんだ。暴走列車のようなものだよ、もうヒーロー以外には手を付けられない。だから俺が止めてあげないと。」
 ヒーローは弱者の味方だからね!と空に向かってアメリカが叫ぶ。それぐらい、イギリスだって知っている。細い身体は中々強靭だし、プライドの高さもまた同じ。意志の強さはイギリスをたじろがせた程だ。
「言っておくが、お前はヒーローでもなければ、お前の掲げてるもんは正義でもない。」
「馬鹿だなあイギリスは。俺はヒーローだぞ。ヒーローだから、俺の掲げる信条は正義以外にないに決まってるじゃないか!」
「それを傲慢だと言ってるんだよ!」
「君、もう引退したら?傲慢は力もないのにヒーローぶるヤツのことを言うんだぞ。」
 じゃあ、それちゃんと読んどいてよ、とアメリカはイギリスに背中を向けたまま、部屋を出て行った。イギリスは悪態を吐き捨ててデスクを殴りつけたものの、無感情に己を見つめる紙面にすら顔向け出来ず、彼がさっきまで見つめていた空へと視線をさ迷わせるのだった。




***
終戦間近









 隙のない動作で、日本の肩に手を回しぐいと僅かに力をこめれば、驚いた風もなくフランスを見上げ、ああやはりあなたでしたか、と笑った。アメリカの隣りに彼が佇むようになって、随分と久しい。未だにスーツの着こなしは難しいようだが、それでも過剰な背伸びはしなくなった。表情も以前のような掴みにくさは鳴りを潜め、喜怒哀楽は素直だ。ただ、やはりそこは日本であるから、時々、彼が何を考えているのか、彼が何を思っているのかが分からなくなってしまうことはある。怒っているのか、彼の中では既にかさぶたとなって綺麗に完治してしまった傷なのか、分からないことはもちろんあるのだ。二極に存在するはずのその感情がどちらなのか、そんな簡単なはずのことを覚らせないのは流石と言おうか、ひねくれていると言おうか。

「少し、疲れましたか?」
「ん、まあ、少し、ね。そういう日本は、極限に疲れてても顔に出ないからお兄さんは困っちゃうよ。」
「口説く相手を間違えておいででは?」
「お兄さんは可愛い子の味方よ?それに、さっきまでアメリカとイギリスの馬鹿に挟まれて可哀相な日本を癒してあげようかな、と、ね。」
 それはそれは、ありがとうございます。そう言って日本は微笑む。この微笑は、特に感情が読めない。更につついても良いだろうか、彼はそう言いながら追求されることを拒んでいるのではないだろうか。一瞬の逡巡。ふと会場の喧騒が大きくなる。ああまた、イギリスとアメリカがどうでもいいことで揉めているのだろう。フランスが思わずため息をつけば、日本はふふ、と呼気を吐いて笑った。

「微笑ましいですねぇ~」
「日本、ちゃんと現状を理解してる?」
「ええ、もちろん。微笑ましい兄弟喧嘩です。アメリカさんはイギリスさんと対等な立場に立てて嬉しそうですし、イギリスさんは、あの方は何事にも熱いお方ですから。」
 そうして、まるで慈しむような目で彼らを眺めている。そこには僅かな切なさも含まれていて、フランスはつい反論することを忘れてしまった。いとしいと、慕情と苦しみを向けているのはどちらだ。
 しかしそんな日本のはかなさは、すぐに打ち消されてしまった。止めに行かないのですか?と話を振られて、え?と間抜けな返事。ああお兄さん大失態!いい男は隙など見せてはいけないのだ、常にピシッと気を引き締め、常に周りに(主にお美しいお嬢さん方※例外あり)に気を配っていなければいけないのに!

「楽しい兄弟喧嘩なら、もう少しじゃれ合ってればいいんじゃない?」
 そう苦し紛れに言えば、そうですね、とまた日本は笑う。そこに沈んでいる感情は何だ。

「フランスさん。」
 ん?なぁ~に?言いながら顔を向ければ、やはり穏やかな表情のままだ。この表情の彼は、嘘を言わない。多分、おそらく、そんな曖昧なものでしかないけれども。

「わたしとアメリカさんは、あなた方が思っている以上にうまくやっていますよ。あなた方が想像するようなドロドロしたものは、正義の味方とその配下には似合わないんですって。」
 お聞きしたかったことはこれでしょう?とでも言いたげに、そうきっぱりと言い切った日本は、フランスが問い詰める前にするりと脇を抜けて、二人の喧嘩を止めるべく彼らの間に身体を滑り込ませたのだった。




***
現代
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