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TOSの古代勇者様御一行の話です。
捏造ばかりなので、苦手な方は退避してください。
設定については、『TOS(設定)』カテゴリにありますので、よければ御一読ください。


『あれは確かに恋でした。』

こ・・・焦がれる


ハーフエルフ反乱直前の話です。
ユアンとクラトスが分かれる時の話。
後々再会しますが、この時の二人は、これが今生の別れぐらいの思いでした。
二人は付き合ってはいなかったけれど、無二の親友というか、互いに信用も信頼もしてました。
互いに気を許していた存在、とでも言いましょうか。
大切に想いを育ててた二人です。







『焦がれる』


既にハーフエルフの大規模な反乱については、クラトスの耳にも入っていた。近年のハーフエルフ差別に耐え切れなくなったハーフエルフ達は、自由を求めてシルヴァラントへと結託して逃亡するのだ。今はまだ公に騒ぎが起こってはいない。テセアラの国政に不満を持つハーフエルフ達を募っている最中らしい。人間であるクラトスがその事情を知っているのは、大半がハーフエルフで構成されている魔科学研究所に出入りしているからだ。ハーフエルフに育てられた過去を持つクラトスには、ハーフエルフを差別する感情が己の中に育っていない。国の最新の研究状況を知ることが出来る魔科学研究所は、クラトスにとっては気晴らしの場のようなものだ。
エルフの住むヘイムダールを領土に有しているテセアラに比べて、シルヴァラントにはハーフエルフの数自体が少ない。聞く話によると、実力主義であるシルヴァラントでのハーフエルフの扱いは、テセアラよりも良好らしい。不満の溜まったハーフエルフ達が流れるのも当然と言えただろう。

クラトスは投函された手紙に、もう一度目を落とした。余程忙しい中で書いたのだろう、几帳面な彼にしては字が歪んでいた。しかし学生時代から見慣れた、彼の筆跡に間違いはない。そっとため息をついて、クラトスは扉に視線を向けた。

「開いている、入れ」

たった今ノックをしようとしていただろう、扉の向こうの気配は、僅かの逡巡の後、ゆっくりとドアノブを回した。久しぶりに見る旧友の顔には、疲労の色が浮かんでいた。思いつめた表情が顔に影を落としている。

「相変わらず、愛想のないことだ」
「今さらだろう。それに、お前の方も似たようなものだろう?」

それもそうだ、とようやく笑みを作ったユアンは、久しぶりだとクラトスの肩を軽くたたいた。クラトスもユアンの言葉に頷き、表情を緩める。クラトスを知る人間が見れば目を見開くだろうクラトスの表情だ。学生時代に築いた信頼関係は、二人の間に気安い空気をもらたしている。

「…近いうちに、私はシルヴァラントへ行く」
「…そうか」

絞り出すように呟いたユアンだが、返ってきた相槌は素っ気無いものだった。ユアンは僅かに驚き、知っていたのか?と訊ねるも、すぐに思い当たる節を見つけたようで、ああ魔道研か、と独り言をこぼした。

「…共に、来ないか?」
「…私はハーフエルフではないぞ」

クラトスは苦笑する。これがクラトスではなかったら、この反応にユアンは激昂しているだろう。ユアンは彼がどれだけハーフエルフにあこがれているのかを知っている。いや正確には、マナの視える存在に、なのだが。クラトスは、己がハーフエルフだと知っても何も変わらなかった奇特な男である。一般常識がどこか欠如しているのだ。狭間の者を差別することを知らないようだった。

「ここはお前にとっても、息苦しい場所に思えて仕方がないのだ。私は冗談は言わぬ。共に、来ないか?他のハーフエルフ達もお前ならば歓迎する」
「…それでも、私はまだここを離れるわけにはいかない。私はまだ、この国の可能性を信じたいのだ」

折角の申し出だが、な。とクラトスが笑みを作れば、強情な奴だ、とユアンは苦々しく告げたが、それでもその返答を予想していたようで、動揺はなかった。

「話というのはこのことか?」
「いや、」

ユアンは首を横に振って口を開いたものの、その先の言葉は途切れてしまった。余程言い出しにくいことなのか、口の開閉を繰り返している。クラトスはプライドの高い彼の性格をよくよく知っているから、助け舟を出すこともなければ、その先を促さなかった。彼の決意が固まるまで、じっと待っているのだ。
緊張しているのだろうか、ユアンの額には薄っすらと汗が浮かんでいる。窓を締め切った室内だ、いささか蒸す。クラトスは必死に言葉を探しているユアンの顔をじっと見つめていたが、流れそうになる汗にそっと手を伸ばして、指先でその滴を拭った。ユアンは無意識に俯けていた顔を上げて、クラトスを見た。クラトスはただ静かにそこに佇んでいる。ユアンが、己はハーフエルフだと告げたその日のままだ。クラトスにとって、ユアンがハーフエルフだろうがエルフだろうが、それこそドワーフだろうが関係のないことなのだろう。意を決したユアンはようやく口を開いた。

「頼みがある」

クラトスは何も言わず、視線でその先を促した。

「私と…マナの交換をして欲しい」

咄嗟に言われたことが理解できなかったのだろう。クラトスからの返事はなかった。ハーフエルフと同等の知識を有していると言っても過言ではないクラトスだが、流石にこの行為までは知らないようだった。正式な儀式ではないこの行為を文書化して書き残している物好きもいないだろう。確かに、細かな手順も聖句もいらない。それでもマナを知る者たちは、この行為を儀式と言って崇めている。体内のマナの交換である。互いの命の輝きを互いに行き来させるのだ。深く繋がった者同士でなければ行わない。一種の性交である。否、それ以上に尊い儀式なのだ。
ユアンはそっとクラトスの表情をうかがった。クラトスは凛と伸ばされた背筋のまま、ユアンを見つめている。クラトスの表情に曇りはなかった。

「承知した。それで、私はどうしたらいいのだ?」
「…良いのか?お前は、これがどういった意味を持つのか、知らないのだろう?」
「確かに知らぬが、お前の眼を見ていれば、その行為がどれ程大切なものなのか知れる」

お前はもっと、自惚れてもいい。クラトスは言って、ふわりと笑みを浮かべた。ユアンは咄嗟の言葉が見つからず、性急とも言える動作でクラトスの両手をすくい上げた。クラトスには彼がどれだけ感極まっているのか、その理由が分からなかったが、彼が喜んでいることだけは感じ取ることができた。

「お前は何もしなくていい、楽にしていろ。ただ、」
「ただ?」
「私を拒むな。それだけだ」

ユアンの縋るような言葉にクラトスは一瞬ぽかんと呆けたものの、お前は大馬鹿者だ、とくすくすと笑い声を上げた程だった。触れている手は燃えるような熱を持っている。そのくせ、手を握り締めるその手付きは慎重で臆病だ。何を緊張しているのだ、とクラトスがその手を握り返せば、びくりとユアンの肩が揺れた。あまりの動揺っぷりに、クラトスの口から笑みが消えることはなかった。





***
ここまで。書きたかったのは、尻込みするユアン様と尊大なクラトスさんなので。
ユアン様を美化してます。知ってます。
あと、クラトスさん別人ですねー。でも古代勇者の方ではこんな感じです。あまあまです。
マナの交換云々は私設定です。これ、後々、相性の悪い人同士でやると体調を崩したり精神に異常を来たしたりすることが発覚して、行為そのものが消滅します、っていうどうでもいい設定があります。ゲーム本編でユアンがクラトスにマナを送っても大丈夫だったのは、こっちで既に経験してたから、っていう、ね、妄想がね、あるんです。多分リフィル先生に怒られて、この過去もぽろっと零しちゃって、呆れられる、っていう流れが、ね、うん。

書くの久しぶりすぎて、無駄に長くなってしまった…。

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